研究課題/領域番号 |
25280066
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
北村 達也 甲南大学, 知能情報学部, 教授 (60293594)
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研究分担者 |
伊藤 仁 東北工業大学, 工学部, 准教授 (00436164)
蒔苗 久則 科学警察研究所, 法科学第四部, 主任研究官 (20415441)
齋藤 毅 金沢大学, 電子情報学系, 助教 (70446962)
網野 加苗 科学警察研究所, 法科学第四部, 研究員 (70630698)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 声道 / 調音運動 / MRI / 鼻腔 / 磁気センサシステム |
研究実績の概要 |
本年度は以下の成果が得られた. 1. 磁気センサシステムによる調音運動計測手法の確立:磁気センサシステム(NDI社Wave)のセンサが発話に及ぼす影響を軽減するため,純正品のワイヤを細く,柔軟性のあるものに交換した.その影響を評価する実験を実施し,有効性を確認した.また,口蓋形状を含む歯型とセンサを埋め込んだバイトプレートを用いて,再現性のある手法で調音空間を正確に計測する手法を開発した.これらの成果に関して日本音響学会研究発表会などで発表を行った.2015年度にはこの手法の講習会が開催されるほか,学会誌に解説記事が掲載される予定である.このように,本研究課題において開発された手法が,関連領域の研究にも利用される段階まで進んでいる. 2. 物真似発話時の調音運動観測:プロの物真似タレントを対象にしてMRIにより物真似発話時の調音運動の観測を行った.物真似タレントは,1名の発話器官で複数の話者の声質を生成できるという意味で音声の個人性にとって貴重な研究対象といえる.MRIデータを分析した結果,通常の発話の範囲を超えた喉頭位置の制御および舌形状の複雑な制御によって多様な声質を作り出していることが明らかになった. 3. 鼻腔音響特性のシミュレーションおよび計測:3次元CTデータから詳細な鼻腔形状を抽出し,時間領域差分法によるシミュレーションを試み,実行可能であるを確認した.また,外部音響励振法の装置を製作し,鼻腔音響特性を簡便に計測できることを確認した. その他,鼻腔音響特性の個人性知覚への影響,音声からの声道長の逆推定,声道音響特性の3次元シミュレーションと1次元シミュレーションの比較について国際会議にて成果発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は以下の成果が得られたので本研究課題はおおむね順調に進展していると考える. 1. 磁気センサシステムによる調音運動計測手法の確立:調音運動のモデル化に必須となる大量の調音運動を計測する手法が得られた. 2. 物真似発話時の調音運動観測:世界初となるプロの物真似タレントの物真似発話時の3次元MRI計測を実施し,音声の個人性生成と声道形状の関係について多くの知見が得られた. 3. 鼻腔音響特性のシミュレーションおよび計測:1990年代以来ほとんど研究が行われてこなかった鼻腔音響特性について,生体観測およびシミュレーションの技術を用いて解明を進めることができることを確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の点について研究を進める. 1. 3次元舌形状のモデリング:3次元動画MRIによる調音運動の計測を行い,舌形状をモデリングする.正中面の2次元の舌形状から3次元の舌形状を推定する手法を確立し,少ない観測データから効率的に3次元調音運動を生成できるようにする. 2. 鼻腔音響特性の計測およびシミュレーション:3次元CTスキャンにより得られた3次元鼻腔形状を3Dプリンタにより造形し,音響計測によりその音響特性を分析する.さらに,時間領域差分法によるシミュレーションを実施し,鼻腔の形状と鼻腔音響特性におけるピークと谷を対応づける.これらを通して,音声の個人性への鼻腔の音響特性の影響を明らかにする. 3. 磁気センサシステムによる3次元調音運動計測:これまで正中面(2次元)を対象に開発してきた観測手法を3次元に拡張し,調音運動を計測する.口蓋形状の3次元計測手法を確立し,口蓋形状が各話者の調音をいかに規定するのかを調査する.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は磁気センサシステムを用いた調音運動観測法の開発に注力したため,MRI撮像を実施しなかった.そのため,撮像費として申請していた費用が次年度使用額となった.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はMRI撮像を実施し,磁気センサシステムとMRIによる調音運動観測データを融合させる手法について検討する.
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