研究課題/領域番号 |
25280067
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
松井 知子 統計数理研究所, モデリング研究系, 教授 (10370090)
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研究分担者 |
武田 一哉 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (20273295)
MARKOV K 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (80394998)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ガウス過程 / 時空間モデリング / 音響信号処理 / 音楽情報処理 |
研究概要 |
本研究体制は、カーネル関数を利用したガウス過程を主軸に用いた事例研究を推進する音響応用班、音楽応用班、事例研究から得られる知見に基づいて汎用的なガウス過程に基づく技術について検討する基礎数理班の三つの班で構成している。平成25年度の研究実績を各班別に説明する。 基礎数理班では、時空間データを扱う方法についてサーベイを行うとともに、ガウス過程のカーネル関数のパラメータを最尤法によって推定すると推定局所解の問題がしばしば生じることを確認した。来年度は、ベイズ推定する方法(Iterated Conditioning on the Modes(ICM)法)について検討を行う方針を立てた。 音響応用班では、ガウス過程回帰を用いた音響空間のモデル化について検討した。本方法では音響空間を確率的に扱うことで雑音やゆらぎの問題に対処する。時空間上での音響空間の関係をうまく捉えるために、音波の位相を考慮したカーネル関数として波動方程式に基づくカーネル関数(波動カーネル)を新たに設計した。定常的な音波を用いて、波動カーネルとガウスカーネルによる音圧時系列の推定性能を比較する実験を行った。その結果、波動カーネルはガウスカーネルと比べて、高いSDR(Signal-to-Deviation Ratio) 値を示し、波動カーネルの有効性が確認できた。 音楽応用班では、時空間ガウス過程モデルを音楽ジャンル分類の問題に適用し、従来のSVM(Support Vector Machine)による方法と比べて、高い性能が得られることを確認した。 平成25年7月には、STM2013(International workshop on spatial temporal modeling from statistical, machine learning and engineering perspectives, http://www.ism.ac.jp/symposia/STM2013/)を共催し、ガウス過程や時空間モデリングの専門家を含めて、音響応用および音楽応用の技術的な問題点について議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基礎数理班、音響応用班、音楽応用班は、定期的に対面/オンライン研究打合せを行い、密に情報交換・議論することにより、それぞれの計画を予定通りに遂行することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
基礎数理班、音響応用班、音楽応用班ごとに今後の推進方策を示す。 基礎数理班は、ガウス過程のカーネル関数のパラメータを事後確率最大化法、ベイズ推定する方法(Iterated Conditioning on the Modes(ICM)法)について検討を行う。 音響応用班は、時空間ガウス過程モデルを用いて、頭部伝達関数(Head-Related Transfer Function, HRTF)を推定する方法について検討する。これまでガウス過程回帰を用いてHRTFを補間する方法について検討を行い、従来の線形補間や主成分分析を用いた手法と比べて、頑健に補間できることを確認してきた。ここではその方法を拡張し、任意の点でHRTFを推定できる方法の確立を目指す。 音楽応用班は、時空間ガウス過程モデルを用いて、音楽ムードを推定する方法について検討する。 平成26年7月には昨年度に引き続き、STM2014を開催して、時空間ガウス過程モデルに基づく技術の高度化、および問題点について議論する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に、音響空間モデルのパラメータを事後確率に基づいて推定し、より高い推定性能を示して、その結果を国際会議などで発表する予定であったが、十分な性能が得られずに発表に至らなかった。そのため未使用額が生じた。 音響空間モデルのパラメータ推定について、更なる検討を行い、その結果を国際会議などで発表していく。その費用として使用する。
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