レンズアレイを用いた時分割指向性バックライト式裸眼立体表示方式については、平成26年度までで基本的な原理確認は終えていた。平成27年度は輝度の向上とクロストークの低減という実用化に向けての最終課題を解決した。並行して、実際に筑波大学病院の医学生教育において、肝臓手術シミュレータの表示用ディスプレイとして実際に使用し、その評価を行った。医学生を対象にしたアンケートの結果、特に輝度向上とクロストーク低減後は高い評価が得られ、血管の走行や肝臓の形状変形の把握において、フルハイビジョンの裸眼立体ディスプレイによる表示が有効であるとの回答を得た。
時分割パララックスバリア方式についても、平成26年度までに基本的な原理確認は終えていた。本年度は、クロストークのない視域を算出する理論の構築、観察者による評価実験、装置の輝度の向上などに取り組んだ。完成した装置は、既に実用レベルに達しており、今後手術シミュレータなどの用途への応用を検討する予定である。
パネルを層状に重ねることによる輻輳調節矛盾の低減については、平成26年度に粗インテグラルボリューム表示の枠組みで提案した非負・非正エッジフィルタを利用することで、観察者の視点追従をしながらボリューム表示を行う時、遅延による発生する前後の像のずれを目立たなくする課題に取り組んだ。実際に実験装置を用いて評価を行い、提案手法の有効性を確認したが、観察者の動きが速い場合は、観察者の追跡が十分高速に行わなければならないことが明らかになった。
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