今年度は、当初計画ではモデルの評価に重点をおく予定であったが、昨年度に検討した手指の計測手法の改良と、物体モデルの高度化にも取り組むこととした。また、提案モデルと力覚提示デバイスの統合についても検討した。 (a)手形状計測手法の改良:昨年度に開発した、爪および掌の計測による手形状推定手法の改良を試みた。この手法では、逆運動学(IK)計算のための誤差関数を計測誤差に基づいて定義するが、その際に、計測値の信頼性により誤差を重みづけすることで精度の向上を試みた。また、IK計算における反復計算について、収束と計算時間のトレードオフについて検討し、240Hzの更新レートで平均誤差およそ並進1.8mm回転12deg.の計測が可能であることを確認した。 (b)VR物体モデルの高度化:任意形状の物体との接触応答を容易に計算できるモデルとして、メタボールによる表現について検討し実装した。メタボールによる表現では、法線の変化の連続性が保障され、また、表面近傍においてポテンシャル場の勾配が計算可能であることが特徴である。この空間的な勾配を利用することで、物体表面での接触点の探索や滑りの近似的計算を実現した。 (c)手モデルと操作性の評価:以上(a)(b)の成果を含む物体操作環境を構築し、この環境における操作感および操作性について評価した。デモ発表の機会を利用して、体験者にアンケートをとる形式で実施した。この結果、物体との接触を伴わない変形では、現実感が比較的高く評価された。 (d)力覚提示デバイスの統合:力覚提示は、本研究で開発した手モデルの期待される応用の一つであったが、今年度の実施の過程でデバイスの試作と利用が可能となったため、予備的な検討を行った。各指に独立な力ベクトルを提示するシステムを構築し、操作モデルと統合することで、力覚を伴う操作を実現した。
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