研究課題/領域番号 |
25280076
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
中野 有紀子 成蹊大学, 理工学部, 教授 (40422505)
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研究分担者 |
岡田 将吾 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (00512261)
黄 宏軒 立命館大学, 情報理工学部, 准教授 (00572950)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マルチモーダルコミュニケーション / 議論状態の推定 / 非言語行動の認識 |
研究実績の概要 |
H26年度は,前年度に収集したマルチモーダルコーパスの分析,モデル化を中心に取り組んだ.以下に,本コーパスを利用して得られた成果を列挙する. (1) 影響的な発話(influential statement)の予測:新たなアイデアの創出に寄与し,論点に関する他者の意見を誘引するような「影響力のある発言」を頻繁に行う参加者は,議論をリードする人物であると考えられる.このことから影響力のある発言を検出することにより,議論の流れの追跡や,参加者のコミュニケーションスキルの予測が可能であると考えられる.そこで,収集したコーパスを利用し,韻律情報,加速度センサによる頭部動作の情報から,グループディスカッションにおいて影響力のある発言を予測するモデルを作成した.提案モデルの性能は,良好であり,F-measureは0.74である.また,影響力のある発言をより頻繁に行う人は,ファシリテーション能力が高いと評価されることも確認できた. (2) コミュニケーション能力の推定:採用経験者に収集したデータのビデオを見てもらい,コミュニケーション能力,傾聴する姿勢,双方向の円滑なコミュニケーション,情報伝達力, 論理的で明瞭な主張,の各観点について各被験者を評価してもらった結果を,コーパス中の言語・非言語情報から予測する重回帰モデルを作成した.その結果0.7~0.9程度の重相関係数が得られ,当てはまりのよいモデルを得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度のコーパス収集,2年目のコーパスの分析については概ね予定通り進行している.「影響力のある発言」の予測については,モデル化がほぼ完了し,モデルを実装することにより,影響力のある発言を検出するシステムの開発にも取り掛かっている.しかし,特にリアルタイムでのデータ処理を実施しようとする場合,各センサに様々なノイズへの対処が必要となり,モデルにデータを適用するまでの前処理の必要性が明らかになった.したがって,システム化については今年度も引き続き取り組んでゆく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
これまで2年間で,データ収集といくつかのモデル化に取り組んできた.3年目である今年度は,これまでに得られた知見に基づき,応用も視野に入れた研究を進めていく予定である. (1) 応用研究:音声や各種センサにより計測された行動データをオフラインで解析し,議論状態等を推定し,その結果を可視化するツールを開発する.さらに,議論状態をオンラインで判定する機構の実装にも取り組んでいく.これが実現すれば,進展中の議論をリアルタイムで解析し,必要に応じてシステムから参加者に対してアドバイスをする等の議論支援が可能になることが期待される. (2) 共起パターンをモチーフとしたマルチモーダルコーパスの分析・モデル化:コーパスの分析手法についても引き続き研究を行う.これまでは,各モダリティの行動をそれぞれ異なる特徴量として設定していたが,複数のモダリティ,複数の参加者の行動の共起パターンを特徴量とすることにより,特徴的な行動だけでなく,特徴的な共起関係を明らかにすることにより,会話参加者間のインタラクションのよりよいモデルを作成する.
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次年度使用額が生じた理由 |
マルチモーダルデータへのアノテーション(注釈)に係る謝金が2015年度に必要 になったことから,次年度に170000円 を繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度はデータの注釈の謝金に,繰り越し金を計上する.
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