研究課題/領域番号 |
25280077
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
橋本 周司 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60063806)
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研究分担者 |
松本 友実 (阿部 友実) 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (10570905)
酒井 幸仁 福岡大学, 工学部, 准教授 (60409654)
山口 友之 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 助教 (50424825)
中村 真吾 芝浦工業大学, 工学部, 助教 (50424809)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インタフェース / ロボットアーム / 第3の腕 / タクタイルディスプレイ / HCI |
研究概要 |
本研究は,人間の身体の拡張という考え方に基づき,人間の身体運動に新たな自由度を付加するための技術的基盤を確立することを目的としている.そのため,身体に装着したロボットアームを第3の腕として自在に操ることを具体的な例として研究を行った.アームの制御には繊細な運動が可能な舌を用いる口腔インタフェースを用い,アームの身体イメージの獲得のために,ユーザの体の自由を奪わないように背面装着型タクタイルディスプレイを新たに開発した. 試作した口腔インタフェースは,口に咥えた棒を舌先で動かすことで操作するものである.棒の先端には9軸姿勢センサ(IMU)が取り付けられている.IMUは3軸角速度センサ,3軸加速度センサ,3軸地磁気センサから構成されており,正確な姿勢四元数を検出できる.また,もう一つのIMUをユーザの後頭部に装着することで身体の動きを分離し,頭部を原点とする座標系における棒の姿勢四元数を得て3自由度の操作量を持つインタフェースを実現した. タクタイルディスプレイには,応答が早く,振動周波数,振動振幅を個別に制御できるボイスコイル型振動子を採用した.試作システムを用いたユーザ実験を行い,振動の周波数と振幅に対する背中の分解能を調べた. ロボットアームは軽量化を実現するために、バネに取り付けた3本の紐の長さを制御し,長さに差をつけることで曲げる新規な構造を検討した.これにより大域的な屈曲運動を実現できた.しかし,先端だけを動かす細かな動作は実現できていない.そのため、口腔内運動センサでのアーム制御およびタクタイルフィードバックの実験は,アームロボットのシミュレータを用いて行った.実験の結果,視覚情報なしでも真の腕と同等の正確さで先端の位置決めが可能であることが判った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.信号処理解析:9軸姿勢センサ(IMU)から出力される舌先と顎の3次元運動情報から頭部運動の成分を差し引く信号処理に成功し,ジョイスティックなど既存のデバイスとの互換性も実現できた. 2.口腔インタフェース開発:無線化した3自由度のインタフェースを完成し,移動ロボット,アームロボットなどの操作実験に成功した. 3.タクタイルディスプレイの開発:ボイスコイル型振動子の採用により,機械型振動子に比べてはるかに表現力の高いシステムが実現できた. 4.ロボットアーム開発:多関節ロボットアームによる第3の腕を検討したが,電源を含めた総重量および予算の制限から,動作制限機構を導入した新しい方式のアームの開発に切り替えて,研究を進めることとした. 5.総合システム:口腔インタフェースの出力とロボットアームへの制御信号及びロボットアームからのフィードバック信号をタクタイルディスプレイへの提示するプロトコルを決定し,シミュレーションアームではあるが予期の精度で制御できることを実験的に確認できた. 以上のように,信号処理系と各ハードウェアの1次統合を行い,試作機を用いた評価実験を実施し,ユーザの運動表現とアーム形状のタクタイル表示の関連づけが行えた.
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今後の研究の推進方策 |
1.信号処理および口腔インタフェースの改良:IMUを複数用いることにより頭部運動と口腔内動作の分離性能をさらに向上させるとともに,ワイヤレスデータ転送の高速化とデータ形式の検討を行う.また,試作インタフェースを用いて口腔動作の個人差を実験的に求める. 2.タクタイルディスプレイの改良:フィードバック掲示のための振動パターンのユーザ評価を行い,個人ごとに表示を最適化する方法を検討する.さらに,タクタイル素子の面配置の最適化を図り,装着性の向上した小型軽量のディスプレイ装置を設計・製作する。 3.ロボットアームの開発:動作制限機構を用いた多自由度ロボットアームを制作し制御アルゴリズムを検討する.また,ユーザが装着するための装着部の設計開発も重要である.アームは,老若男女のできるだけ多くの人にとって着脱容易なものとし,関節状態のフィードバックのためにアーム内センサを実装する. 4.統合システム:完成したすべてのハードウエアを統合して,身体拡張器として第3の腕を完成させる.また,ユーザテストによる操作実験を行うなかで,口腔インタフェースによるアーム操作の状況が,タクタイルディスプレイで精度良く把握できるようになるためのユーザ訓練の手順を検討する. 以上の予定であるが,アームについてはさらに他の方式も検討する必要があると考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初購入を予定していた7自由度ロボットアームを具体的に検討した結果,総重量など性能面が研究目的に合わないことが判明したため,部品を購入して設計製作することになったが、制御および機構の方式決定に時間を要し、本格的な製作は次年度に回すことになったために次年度使用額が生じた。また、これによって国内および国外での研究発表の機会が次年度になったため、旅費交通費などの繰越も生じた。 ロボットアーム,口腔インタフェースおよびタクタイルディスプレイの何れも新規なアイデアに基づいて製作し、ユーザテストを繰り返して改良することが本研究の手法的特長であるので,主として試作用の機械部品および電子部品の購入に多くの物品費を使用する. また、実験補助と研究補助の人件費,および,海外(欧州および北米)での研究発表を予定しているため旅費も多く計上している.
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