研究課題/領域番号 |
25280087
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
菅原 俊治 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70396133)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ノルム / 大規模分散システム / リソース割当 / 負荷分散 / 強化学習 / マルチエージェントシステム / 進化ゲーム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、異なる能力を持つエージェントが処理を通じて自律的にグループを構成し、その中で適切なリソース/タスクを配分することで、効率的かつ効果的な分散割当法を提案し、その評価、特に大規模エージェントシステムでの効率化とエージェント間の相互作用による影響を解明することである。分散割当問題は、それ自体計算量は多いが、さらにエージェント数が多いと自律的な判断による干渉があり、大きな効率低下を招く。一方でこれは、インターネット上の自動取引、ネットワーク計算機のタスク割当、電力消費の分散/均等化などの配分・割当など幅広い応用を持つ重要な基本問題である。本研究により、数千以上のエージェントからなる実用規模のシステムでも効率かつ柔軟な制御を実現させる。 本研究期間は、昨年度提案したリソース割当て問題の抽象モデルを活用し、互恵エージェントの導入による効率化を確認した。具体的には以下の3点である。第一に、互恵エージェントにアライアンス構造形成のための明示的・暗黙的プロセスを追加し、これを促進かつ安定化させることに成功した。第二に上記の解析結果に基づいて、アライアンスを形成し協調的(互恵的)に活動する戦略と、個々の利得の最大化に着目した合理的行動戦略を自律的かつ動的に選択する手法を提案した。その結果、異なる行動戦略の混在は、タスクが多様な場合には効果が高いことが分かった。第三に、タスクにデッドラインを設けた実時間処理への適応に着手した。エージェントの自律的学習により、同程度の能力を持つ、エージェントのグループ形成が重要であることが分かった。上記に加えて、協調しない(仕事をしない)free-riderを排除し、協調行動を取らせるための単純な手法を考案した。 今後は、実時間性を考慮したタスクにもアライアンス形成による効率化、社会的ジレンマの環境でも協調を生み出す単純な仕組みを提案・確認する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は予定通りか、それよりやや進んでいると考えている。昨年までの結果を拡張し、互恵性エージェントの繋がり(アライアンス)による効率化の確認、前年度課題であった孤立エージェントを合理的エージェントとして混合構成を形成する学習法/アルゴリズムを提案した。また、実時間性を考慮したアルゴリズムの提案とその評価について一定の成果を得ている。これにより競合やそれによる学習の不安定さが解消され、結果的に高い効率性がえられている。さらにエージェントネットワーク(エージェント間の一般的な繋がり)があるにもかかわらず非協調な行動を排除、協調を拡大し、伝搬・持続させる手法についても提案した。これらの成果は、当初の計画に加えて新らたな知見が得られたことを示す。上記の結果は国際会議に投稿し、採択済み(aamas/coin 2015, SASO2015, WI-IAT2015, PRIMA2015, ICAART2016など)論文の他、協調行動の拡大・伝搬・維持についてはAAMAS2016で発表予定である。 今後は、エージェントネットワークでの協調行動の促進や、実時間性のあるタスクでの互恵エージェントの活用、さらには通信帯域などのコストを導入したモデルへ拡張したい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度得られた成果を継続・拡張することを計画する。特に、昨年度着目した研究計画書研究課題(3)における離脱・再編行動などのアライアンスの形成に関する手法の効果についてさらに調査するとともに、研究課題(4)、つまり「初期状態として与えられたネットワーク構造を、タスクや資源の変化に応じて効率化を生む構造に変動させる」ことにも視点をあてる。特に、効率の低下や割当て失敗を局所的に観測し、構造変動の機構を導入することから着手する。ここでは、これまで通り互恵性が重要な視点になるが、同時に、一定数の合理的戦略を取るエージェントが重要と考える。この構成数を外から与えるのではなく、エージェントの自律性から自然に決定することをすすめる。 さらに、エージェントネットワーク内で協調を維持させる手法の効果と特徴の解析と高度化、ネットワーク構造に距離の概念を導入したときの協調行動の維持についても取り組む。ここで距離とは、たとえば通信のコスト、遅延などであり、これを効率から間接的に観測し、適切な協調相手、グループの編成に導入させる。また、実時間性など、時間とともにその効用値が変動する場合も、モデル化に加える予定である。 これまでの結果と合わせ、国際会議や国内外の論文誌などへ投稿・発表することをめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議の参加費、旅費などは、採択から半年程度後になるため。 また、論文掲載料も300-400千円予定していたが、査読の判定に時間がかかるため。
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次年度使用額の使用計画 |
5月 380千円 (国際会議, aamas2016)、6月 350千円 (国際会議、kes-amsta 2016)、7月ごろ 300千円、論文掲載費など。
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