研究課題/領域番号 |
25280089
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 和之 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (80217017)
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研究分担者 |
安田 宗樹 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (20532774)
和泉 勇治 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (90333872)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 数理工学 / 機械学習 / 統計数学 / 情報統計力学 / 確率的情報処理 |
研究実績の概要 |
平成26年度は確率伝搬法にもとづくコミュニティ抽出の計算モデルの数値実験,統計的解析を実施した.生成モデルとネットワークの統計的性質が提案した計算モデルに与える影響の分析を通して高性能の確率的コミュニティ検出計算モデルの構築に成功し,その成果の一部は国際会議CIMCA2014における査読付き論文として公開した.またネットワークの例えば次数分布,次数相関などに代表されるような統計的性質が尤度関数のハイパパラメータすなわち相互作用パラメータの関数としての微分可能性に与える影響も解析も行っている.そこで得られた知見を画像の領域分割に転用し,確率伝搬法と拘束条件付きエントロピー最大化にもとづく計算モデルによる良好なモデル選択と画像領域分割が達成できることを確認した.その成果の一部は査読付き学術論文「J. Phys. Soc. Jpn, Vol.83, Article No.124002 (2014)」として公開した.更に研究代表者は研究分担者である安田宗樹准教授との協力により同計算モデルに統計物理学における伝統的計算技法のひとつである実空間繰り込み群法を組み合わせることにより計算速度の大幅な改善を行うことに成功した.これは当初の研究計画立案の段階では想定されなかった成果として評価され,その成果の一部は査読付き学術論文「J. Phys. Soc. Jpn, Vol.84, No.4」として公開した.更に研究分担者の安田宗樹准教授との協力により複雑ネットワーク上の計算モデルの統計的性能評価に関する定式化を進め,その成果の一部は査読付き原著論文「IIS, Vol.21, No.1, pp.11-23 (2015)」として公開した.また,確率伝搬法と線形応答理論を組み合わせた新たなアルゴリズムの具体的設計を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画はほぼ順調に進展し,その研究成果の一部は平成26年度も2件の査読付き原著論文および1件の査読付き国際会議論文として公開している.1次相転移という確率モデルに内在する複雑かつ膨大な準安定状態の発現メカニズムに切り込みつつ,複雑ネットワーク上のコミュニティ検出の確率的計算モデルの構築という本計画研究の最大の課題を達成し,更に計算速度の改善という目的に向けて実空間繰り込み群法という統計物理学の伝統的手法をこれまでにない発想で統計的機械学習理論に世界で初めて導入することに成功し,実際に計算速度を大幅に改善することに成功した.この成果は計画立案段階には想定されなかった成果である.以上の理由によりおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は確率伝搬法と線形応答理論に基づく一般化されたグラフ構造を持つ確率的グラフィカルモデル上のクラスタリング計算技法とエントロピー最大化による定式化のなかで平成26年度までに構築したコミュニティ検出の計算モデルを,遺伝子ネットワーク,ソーシャルネットワーク,サービスネットワーク,コミュニケーションネットワーク,交通ネットワークなど具体的なネットワークシステムへの応用に向けて展開する.この展開は各応用の用途にあわせてその目的を明確化しながら,より複雑な環境から生成されたネットワーク構造の分析という視点において進める.研究代表者が Philosophical Magazine: The Study of Condensed Matter, Vol.92, Nos.1-3, p.50 (2012)において既に提案している情報統計力学に基づく統計的性能評価法を本研究計画における計算モデルに展開することより,本提案手法の統計的性能の解析的評価を行う.平成27年度の研究計画の変更点としては確率的グラフィカルモデルと統計的性能評価法において高度の専門的知識と計算技能を有する片岡駿助教(東北大学)を研究分担者として追加し,研究組織の強化をはかる点が上げられる.最終年度として平成27年度は研究成果とりまとめを連携研究者および海外研究協力者の助言を受けながら進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,出席を予定していた国際会議CIMCA2014の2014年12月にオーストリア国ウィーンでの開催が主催者側の事情により直前にOnline Conferenceに変更となってしまったため旅費の執行ができなかったこと,および海外研究協力者との研究打ち合わせのための招聘および研究代表者の渡航が相手方との日程調整の不調により2014年度内に実施できなかったことが旅費について次年度使用学が生じた理由である. また,当初,データ整理を依頼することを予定していたが,作業が当初の想定以上に高度であり計画研究代表者自身が行うことが必要となり,実際に,研究代表者自身がそのデータ整理用務を実施することで十分な成果を得ることができた.これにより大学院学生への用務依頼ができなかってしまったことが人件費・謝金について次年度使用額が生じた理由である.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額が生じた直接経費については主に本計画研究最終年度としての成果とりまとめのための海外研究協力者との研究打合せを行うための外国旅費として使用する. また,研究成果とりまとめとデータ整理を行うためのコンピュータおよびアプリケーションソフトの導入のための物品費として使用する. 同時に研究成果とりまとめとデータ整理の作業を大学院学生に依頼するための謝金の支出という形でも使用する.
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