生物の持つ多様性や生存戦略を情報処理に利用することで、より柔軟な処理や機知に富んだ判断を計算機上で実現することが期待される。本研究では、遊泳性微生物ミドリムシの生存戦略行動と多様性を実験で明らかにし、それらをソフトコンピューティング機能として実装することを目指した。平成28年度は、確率的ニューロコンピューティングと環境対応実験を行った。 「確率的ニューロコンピューティング」では、より計算が効率的に進められるノイズ振動子タイプのシミュレーションを軸とし、ミドリムシ独自の性質として光に対して回避行動の効率があがる効果(Gradual evacuation、GE効果)と光に対して耐性が増える効果(Photo adaptation、PA効果)のそれぞれを法則として確率適用法として導入した。GE効果を確率0.05で導入するとsolution numberが約1.3倍に増加するが、performance scoreは増加しなかった。また、PA効果を確率0.05で導入するとsolution numberもperformance scoreも2分の1以下に減少した。これらの効果を同時に確率0.05で適用すると、solution numberが1.3倍となりperformance scoreは2.6倍に増加した。この結果により、2つの効果を同時に導入する確率的ニューロコンピューティングが有効であることが実証できた。 「環境対応実験」では、より多数の現象論的記述ルールを適用すべくミドリムシの光応答の安定性と環境ストレスの関係を実験で調べた。環境ストレスを大きく受けた場合には、耐性が失われる場合が確率的に発生することがわかった。これらを確率的ニューロコンピューティングに適応するために、効果ルールの適用確率を計算の進行にともなって徐々に変化させる確率変遷のアルゴリズムを開発した。
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