研究課題/領域番号 |
25280099
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
上條 正義 信州大学, 総合工学系研究科, 教授 (70224665)
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研究分担者 |
吉田 宏昭 信州大学, 繊維学部, 准教授 (40456497)
堀場 洋輔 信州大学, 繊維学部, 助教 (00345761)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 着心地 / 生理反応計測 / 快適感 / 感性計測 / 評価システム |
研究概要 |
本研究では、着心地を生理心理反応から計測評価できる方法の開発を目的にしている。着心地は衣服圧、衣服内気候、接触特性の3つ要因の複合によって影響を受けることが知られているが、本研究では、接触特性における快適感評価について着目している。本年度は、年度当初の計画で設定した2つの研究課題(1)実験サンプルの設計・作製、(2)吸湿・吸汗速乾および保温特性を持つサンプルに対する生理心理反応計測による着衣快適感評価実験を実施した。まず、実験サンプルの作製であるが、肌と直接接触する肌着を題材に、肌着としての利用可能性を考慮した編布を16種類作製した。具体的には、素材として綿、モダール、キュプラ、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン、ナイロン、アクリル、ウールを用いて、これらの混紡糸を作製し、16種類の編布を作製した。 これらの布の材料特性(表面、圧縮、引張、せん断、温熱、通気、透湿、吸水乾燥など)をKESやJISに基づく測定方法で測定した。手触りおよび肌触りの官能評価を行った。肌触り実験においては、前腕に布地を提示した際の生理反応(脳活動、心電図、筋電図、発汗、皮膚表面温度、呼吸、末梢血流、アミラーゼ活性)を測定し、これらのデータから自律神経活動指標などストレス系指標を算出した。結果として下記の知見が得られた。(1)綿、モダール、キュプラを素材とした編布を用いた手触りと肌触り評価から両者間で知覚できる特性に違いがあった。(2)生理反応による評価指標として、脈波の波形から得られる特徴量が快適感(ポジティブな接触感)を表現できる指標となる可能性を得た。(3)混紡糸による編布について評価した結果、水分量や水分移動特性が接触感に大きな影響を与えていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
着心地に影響を与える3つの要因:衣服圧、衣服内気候、肌触り接触特性における刺激の物理量と心理・生理指標との関係から被服が人に与える健康学的なポジティブ影響、ネガティブ影響を明らかにすることが、本研究の目標である。これを実現するために本研究では着心地の中でも接触快適感に着目している。研究期間の3カ年で、以下の項目を実施することを目的としている。(1)快適感が得られると考えられるサンプルを作製し、そのサンプルの仕様に基づく物理刺激および着衣によるネガティブ/ポジティブ影響を心理生理反応および行動の計測から評価する。(2)被服が人体に与える接触刺激を評価するための計測評価システムを開発するための基礎技術を確立する。 本年度は、(1)に関連して、16種類のサンプルを作製し、布地としての材料特性の測定を行った上で手触りおよび肌触りでの官能評価によって接触感の心理評価を行い、材料特性と印象評価の関係について考察した。さらに、快適感を感じている際には、生理反応として脈波の振幅に変化認められ、接触感のポジティブ印象評価のための生理指標としての可能性を得た。以上から、年度当初計画した内容についてはほぼ実施できたと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
接触感が重要な繊維製品として、まず、肌着に着目したが、さらに肌触りが重要な繊維製品としてはタオルがあげられる。特にタオルについては、「ふかふかして気持ちが良い」など快適感に関連した印象が多いと考えられる。今後、肌着を想定した編生地だけでなく、タオル生地を用意し、(1)材料特性の測定、(2)手触り・肌触りの印象評価、(3)生理反応計測による評価を行う。タオル生地の場合には、生地に厚みがあることからフカフカといった印象が発現するが、厚い生地についての材料特性を評価するシステムとして有用なものは世界において希薄なため、本研究において3次元力覚センサを用いた評価システムの開発を目指す。平成26年度は、弾力感に着目し、タオル生地の弾力感を評価するシステムの開発を検討する。 肌着用生地については、衣服形状とした際の着心地評価について検討する。生地における評価実験の成果から肌着として効果がありそうな生地を選定し、その生地から肌着を試作し、着衣による着心地評価実験を行う。着心地評価では、衣服内の温湿度の測定、肌触りの印象評価、心電図などの生理反応を計測することによって着衣ストレスを評価する。
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