研究課題/領域番号 |
25280103
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
野坂 大喜 弘前大学, 保健学研究科, 講師 (80302040)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 術中診断 / 乳がん / センチネルリンパ節 |
研究実績の概要 |
有機液晶波長可変フィルター技術を用いたマルチレイヤー蛍光バーチャルスライドシステムの研究と多焦点蛍光画像可視化のための画像処理技術の研究では、マルチレイヤー技術では撮像後画像からの検出感度が影響し、適切な画像取得が行えない症例が発生していたことから、撮像技術として新たに蛍光撮像画像の重ね合わせ技術を導入し、複数の蛍光撮像画像を基にシグナルを増感させることで検出精度向上を達成した。 また、転移性乳がん細胞自動解析用アルゴリズムの研究では、転移乳がん細胞においては乳がん原発巣での組織型に対応した蛍光染色性を示すため、リンパ節の主要細胞であるリンパ球とは異なる蛍光染色強度や染色パターンを示す異型細胞群を乳がん系バイオマーカーであるCK18,19,20など上皮系腫瘍バイオマーカーをマルチミックス化させた標識ミックス抗体を開発し、特異度を向上させるとともに、核DNA量を測光するアルゴリズムを加えることによって検出アルゴリズムを開発した。 上記2種の研究成果について従来の検出方法である、病理組織学的検出方法と分子生物学的検出方法との比較を行い、検出精度を検証した。その結果、これまで肉眼的診断において見逃していた症例を本システムによって検出することに至ったものの、分子生物学的検出法であるqRT-PCR法には検出感度が及ばなかった。一方で、本法は検出感度は分子生物学的方法に及ばなかったものの、検査時間においては本法が優れていた。 このことから、不一致症例についての再検証を行い、本法による問題点を明らかにするとともに、さらなる高感度化と高精度化をはかる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハードウェア開発において遅れが生じていたものの、既存ハードウェアシステムへの改造と改良によって当初目的としていた検出感度を有するハードウェアに至っていること、また検出試薬の改良によって転移性乳がん細胞自動解析用アルゴリズムの研究については当初の目標を達成している。 一方、病理組織学的検出方法と分子生物学的検出方法との比較を行い、検出精度を検証した結果、qRT-PCR法を用いた高感度検出系に比較し、検査時間の短縮化ははかれたものの、感度面においては劣っており、さらなる高感度化と高精度化をはかることが必要となっていることから、一部課題は残っているものの、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
検出感度の向上においては高感度カメラシステムへの変更による高感度化、あるいはこれまで使用していた蛍光試薬の切り替えによる高感度化により、システムの検出率向上が図れるものと考えられる。 また本法は他臓器のリンパ節転移検出への応用化も期待できることから、研究対象に大腸癌や胃がん等の消化器系リンパ節転移を加えた検証を行うことで、本法の新たな有用性についても検討を加える。 特に本技術は術中診断時での有効性が最も重要な評価指標になることから、本システムの検証について協力医療機関と連携し、より多くの症例を確保することで、偽陰性率の改善をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度乳がんスキャンニングシステムの開発が遅れていたため、新規開発から既存ハードウェアの大規模改造へと開発方法を変更した。既存システムの有効活用によってシステム部品調達コストが可能となった。 しかしながら一方で、蛍光画像撮像カメラの検出感度の改良がさらに必要となったが、カメラの入手が遅れており、執行が遅れている状況にある。
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次年度使用額の使用計画 |
高感度蛍光画像撮像カメラの入手と蛍光試薬の変更により当初申請額の執行を計画している。
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