研究課題/領域番号 |
25280109
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
白井 剛 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (00262890)
|
研究分担者 |
大山 拓次 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (60423133)
真柳 浩太 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (50418571)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 生体生命情報学 / 高分子構造・物性 / アルゴリズム / 分子機械 / 生体超分子構造 |
研究概要 |
1) 生理的複合体グラフ推定法の開発 本年度は、分子間相互作用をグラフで表現し、2次データベース化するプログラムをSIRDシステムに実装する事を目的に研究を行った。まず、PDBフォーマットがmmCIFに移行した事を受けて、SIRDシステムのmmCIF対応と高速化を行った。開発したシステムは相互作用を分類し、等価なインタフェースを同一エッジとして観察する事ができる。また、低分子リガンドなどとの相互作用も表現可能である。さらにこの方法を応用して、結晶構造を自動的に生理的複合体に変換しグラフマッチにより分類データベース化する方法の開発を開始した。グラフマッチには、独自開発の高速グラフマッチ法を利用するが、本年度この特許が成立した(特許第5484946号 平成26年2月28日)。 2) 複合体構造モデリングシステムと実験データによる検証 本研究で開発するグラフデータベースを利用した未知複合体モデリング機能をテストする為に、主としてレプリソーム複合体のモデリングと実験的構造解析を平行して行った。グラフベースのモデリングシステムとして、複数のタンパク質やリガンド分子をクエリとして、SIRDシステムにより作成されたPDB2次データベースを検索し、複合体モデリングの参考になる既知構造と、それぞれの相互作用をグラフとして出力、表示するプログラムを開発した。これを用いて、ラギング鎖DNA合成を行うDNAポリメラーゼ-Fenヌクレアーゼ-DNAリガーゼ-PCNA-DNAの5者複合体構造、DNAミスマッチ部位切断酵素NucS-PCNA-DNA3者複合体などのモデリングを行った。さらに、検証のため、DNAポリメラーゼ-Fenヌクレアーゼ-PCNA-DNA複合体およびNucS-PCNA-DNA複合体の電子顕微鏡解析、NucS-DNA複合体のX線結晶解析を行った。後者は解析に成功し、論文を準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1) 生理的複合体グラフ推定法の開発 分子間相互作用グラフ化については、予定通り着手し予定の6割り程度を達成できた。しかし、複合体のグラフマッチによる分類については、今年度中に完成に至らなかった。主な原因としては、PDBフォーマットがmmCIFに移行した事を受けて、SIRDシステムのmmCIF対応を行った事によると考える。このフォーマット以降により、これまで開発したSIRDシステムの部分にまで遡ってシステムの改変を行う必要があった。 2) 複合体構造モデリングシステムと実験データによる検証 グラフベースのモデリングシステムとして、複合体モデリングの参考になるテンプレート構造を簡便にを検索できるシステムを開発し、これを用いて複合体のモデリングを開始した。これは予定通りに進行したと考える。実験的な検証においても、DNAポリメラーゼ-Fenヌクレアーゼ-PCNA-DNA複合体およびNucS-PCNA-DNA複合体の電子顕微鏡解析、NucS-DNA複合体のX線結晶解析に着手し、いくつかの解析については結果が得られつつある事から、ほぼ計画通りに進行していると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
1) 代謝-構造相関のグラフデータベース化: 立体構造が代謝ネットワークを制御するメカニズムの解析は、今後の重要な課題である。この目的のために本年度は、代謝ネットワーク、およびそれに関与するタンパク質の進化情報をグラフデータベース化する方法を開発する。このデータベースにより、複合体の概念を拡張することが可能である。例えば、反応•相互作用グラフを複合体グラフに展開し、反応(エッジ)を複合体グラフの相互作用エッジと等価とみなし、さらに系統グラフにより相同なサブユニットと置換する事で、柔軟な階層縦断比較を可能にする。また、代謝物を介して間接的に存在するチャネリング複合体の構造の予測を可能にする。 2) 複合体モデル-実験データのグラフによる比較: 予想された複合体モデルと実験データの整合性を、電子顕微鏡単粒子解析などで得られる低分解能の密度マップと分子モデルを比較する方法を開発する。現状のSIRDでは、複合体中のサブユニットが単独で構造解析された構造から変化している場合には、剛体のマッチングが失敗するケースが多々あるという問題があった。そこで、複合体構造をドメイン構造に基づいてグラフ化し、同じく高密度領域の形状に従ってグラフ化されたマップと比較する方法を開発する。 3) 実験的検証: システムの実験的検証として、複合体構造解析を継続する。DNAポリメラーゼ-Fenヌクレアーゼ-DNAリガーゼ-PCNA-DNAの5者複合体構造、DNAミスマッチ部位切断酵素NucS-PCNA-DNA3者複合体など前年度までの研究から、比較的早期に成功が見込まれる対象に集中して行う計画である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
現在までの達成度で述べたように、今年度、PDBフォーマットがmmCIFに移行した事を受けて、SIRDシステムのmmCIF対応を行った。この対応が予想以上に手間取ったために、本来予定していた、研究補助の雇用によるシステム作成の為の仕様策定まで進む事ができなかった。この人件費が主な次年度仕様額となった。 今年度中に、SIRDシステムのmmCIF対応はほぼ修了する事ができたので、本来予定していた、研究補助の雇用によるシステム作成の為の仕様策定を行い、人件費として支出する計画である。
|