最終年度の平成27年度には、実証実験のフィールドとなった「あすと長町プレハブ仮設住宅」及び「里の杜仮設住宅」において、実験停止に関わる幾つかの現場作業、並びに、これまでに得られた高齢者の情報機器の利用記録に関する解析、そして情報機器を利用した見守りの枠組みに関する調査を実施した。 まず、高齢者の情報機器の利用記録(参加者20名,平均利用日数418日,最長利用日数707日)を解析し、起床、就寝、外出回数、報告の減少率などのパラメータを算出した。特に、高齢者の情報機器の利用率は経過日数と共に減少するが、高齢者に(情報機器の利用を促す)お声がけをする社協やNPOの介在の有無が、その減少率の抑制に効果があることが強く示唆された。次に、実験に参加した高齢者の中から、調査に同意を得られた10名に対して長谷川式簡易知能評価スケールを利用した認知機能の測定を実施した。そして、情報機器の利用記録に関するパラメータ(起床、就寝、外出回数、報告の減少率など)と認知機能調査から得られたスコアとの相関を解析した。実験参加者の中に認知機能が著しく低い高齢者が居なかったことや、実験期間中に認知機能の低下を引き起こした高齢者が存在しなかったことから、これらのパラメータと認知機能との間には強い相関は見られないという結果を得た。 実証実験の期間中に、実証実験の主なフィールドであった「あすと長町プレハブ仮設住宅」に居住する実験参加者の多くが、マンション型の「災害復興住宅」に移住したが、この住民に対するアンケート調査(総配布数321戸,回収率77.2%)を実施し、当該地域で「高齢者の見守りが必要」と思う住民(65%)の中でも、約半数が「情報機器を利用した高齢者の見守り活動に参加してもよい」と答えた結果から、本研究の成果の一つである情報機器を利用した高齢者の見守りがに十分に浸透し始めていると考えられる。
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