研究課題/領域番号 |
25280116
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研究機関 | 独立行政法人海上技術安全研究所 |
研究代表者 |
間島 隆博 独立行政法人海上技術安全研究所, その他部局等, 研究員 (30392690)
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研究分担者 |
高玉 圭樹 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (20345367)
渡部 大輔 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (30435771)
小林 和博 独立行政法人海上技術安全研究所, その他部局等, 研究員 (00450677)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 防災 / 帰宅困難者 / 交通システム / 複雑ネットワーク / コミュニティー抽出法 / ネットワーク成長法 |
研究実績の概要 |
・マルチエージェントシステム&路線エージェント生成法 ソーシャルネットワークの分析において発展しているコミュニティー分割法を、効率的な輸送経路で構成される路線網の生成法として応用した。本件で、コミュニティーは駅やバス停の集合を表し、分割された1つのコミュニティー内で1つの路線を生成することとした。また、コミュニティーの分割には、輸送問題に必要不可欠な距離と需要で構成される評価式による値を分割の良し悪しを測る指標として導入し、比較的小規模なベンチマーク問題に対して応用した。この結果、過去に提案者らが出力した最良の路線網を超える性能は得られなかったが、それに近い性能を持つ路線網を得ることができた。さらに、従来手法では初期路線数が大きくなる欠点があったが、コミュニティー抽出法ではその数を大幅に抑制でき、計算速度の向上に貢献できることが明らかとなった。さらに、従来手法では単一の輸送機関(バスや電車など)に限定していたが、手法として採用しているマルチエージェントシステムの長所を活かし、2つの輸送機関を取り扱えるよう改良した。帰宅、通勤困難者問題では、バスだけでなく、水上バスにも期待が寄せられているが、この改造により両機関が混在する問題への対応が可能となった。
・施設(停留所)配置法 帰宅困難者ODデータ推計システム(関東地方を網羅する全鉄道路線と、平日、日中における30分間隔のOD需要をデータベースとして保持しており、時刻と途絶鉄道路線や区間を入力すると、帰宅困難者の発生分布と移動先の分布(すなわち移動需要)をOD別に推計することができる。)による出力結果を路線網生成法の入力データとして用いた解析を試行した。駅やバス停数が大きな問題では、最終的に得られる路線網に、短距離経路で構成される路線が多く生成されてしまう欠点が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・マルチエージェントシステム マルチエージェントシステムの枠組みを用い、大量輸送に適したハブスポーク型ネットワークの生成を自動的に行うことを目的としている。従来固定していた輸送機材の性質(定員と運行速度)を変化させるため、路線を表すエージェントの行動ルールを改良して、機材の選択を行う過程を組み入れ、ハブスポークを含む多様なロポロジーを持つネットワークが生成できることを確認できた。さらに、エージェントの行動ルールの改良により、バス、水上バスなど帰宅困難者問題に貢献できるであろう複数の輸送機関を取り扱えるようにできたため、概ね順調と言える。 ・路線生成法 初期路線集合として効率的な輸送経路を持つ路線やその集合体である路線網の生成手法として、コミュニティー抽出法を応用した。これより初期路線数を大幅に減少しても、最終的に得られる路線網の性能に大きな影響を与えない結果が、ベンチマーク問題を通して得られた。この特性が把握できたことから、概ね順調と言える。 ・施設(停留所)配置法 東日本大震災で発生した鉄道路線ネットワークの状況(当日夜12時)を入力し、帰宅困難者ODデータ推計システムにより、ODデータを作成した。さらに、このデータを路線網生成法の入力データとして用い、大規模なネットワークの試行解析まで行うことができたため、目的は達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
今までに開発、改良された解析ツール群は、マルチエージェントシステムによる路線網生成法、コミュニティー抽出法による初期路線集合生成法、遺伝的アルゴリズムによるハブバス停の配置法などがあるが、帰宅困難者ODデータ推計システムが出力する首都圏を対象とした大規模なネットワークに対して応用して、手法の改良を繰り返し、トータルシステムとしての完成度を向上させる。また、最良の路線網が得られている小規模ネットワークを対象としたベンチマーク問題に対しても改良手法を適用し、解の妥当性、計算速度、手法の限界、拡張性に関する総合的な評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
日程重複により、参加予定の会議数が減り、購入データに関して割引が発生したことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、逼迫しつつある、計算機環境の増強、および、人件費・謝金(プログラミング補助)として、使用予定である。
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