研究課題/領域番号 |
25280123
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
川口 洋 帝塚山大学, 経営学部, 教授 (80224749)
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研究分担者 |
加藤 常員 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 准教授 (50202015)
原 正一郎 京都大学, 地域研究統合情報センター, 教授 (50218616)
関野 樹 総合地球環境学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (70353448)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歴史GIS / データベース / 天然痘 / 牛痘種痘法 / 死亡率 / 19世紀 / 人口 / 古文書画像 |
研究実績の概要 |
本研究では、種痘の普及に伴う天然痘死亡率の低下を主局面とする死亡構造の変化を復原するため、寺院「過去帳」と「種痘人取調書上帳」を原史料とする「近代移行期における死亡構造分析システム」を構築する。平成26年度には次の点について研究開発を行い、研究成果を情報処理学会、日本人口学会、European Social Science History Conference、Pacific Neighbourhood Consortium Annual Conference and Joint Meetingで報告した。 1.前年度に構築した「種痘人取調書上帳」古文書画像データベースから15項目の人口学的指標を算出して、システム利用者コンピュータにグラフ表示するプログラムを開発した。 2.相模国大住郡落幡村(明治8年)、相模国足柄上郡関本村(明治8年)、相模国足柄上郡前川村(明治11年)の史料を既開発の「種痘人取調書上帳」古文書画像データベースに追加登録して、規模拡大を図った。平成27年3月末、本データベースには、2,277件の種痘履歴・天然痘病歴情報、40件の集落位置情報、17件の史料書誌情報が蓄積されている。さらに、相模国淘綾郡大磯宿圓城院に保存されている「過去帳」を既開発の「過去帳」古文書画像データベースに追加登録して、規模拡大を図った。平成27年3月末、本データベースには23カ寺、53,856人の死亡者に関するデータが登録されている。 3.台湾中央研究院のCenter for Geographic Information Scienceなどから歴史GISを活用して歴史人口学・家族史に関わる史料分析を行っている5人の専門家を招聘して、明治大学で平成26年6月14・15日に開催された第66回日本人口学会大会に「情報技術で拓く歴史人口学の世界 -台湾プロジェクトの動向-」という企画セッションを組織して、専門知識の供与を受け、本システム構築と歴史人口学・家族史に関わる研究成果の国際比較に向けての意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、寺院「過去帳」古文書画像データベースの規模拡大、「種痘人取調書上帳」古文書画像データベースの規模拡大、「種痘人取調書上帳」分析プログラムの開発を実施して、インターネット上に公開することができた。本システム開発に関わる研究成果の一部を国際会議、国内学会などで報告した。とくに、台湾中央研究院などから5人の専門家を招聘して、日本人口学会大会に企画セッションを設け、歴史GISを用いた歴史人口学・家族史の国際比較に向けての意見交換を行うことができたことは特筆できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には、平成25・26年度に構築した「種痘人取調書上帳」古文書画像データベースから必要な情報を検索して、牛痘種痘法の普及過程と天然痘罹患率に関わる人口学的指標を時空間分析する歴史GISを開発する。また、「種痘人取調書上帳」古文書画像データベースの規模拡大、「種痘人取調書上帳」分析プログラムの充実を図る。さらに、一般利用者のために、検索利用マニュアルを作成する。 本システムの開発と本システムを活用した牛痘種痘法の普及にともなう天然痘死亡率の低下に関して得られた知見を情報処理学会、The 16th International Conference of Historical Geographers、The 22nd International Congress of Historical Sciences、The Third Conference of East Asian Environmental Historyなどで報告し、歴史GISを用いた国際比較に向けての準備を整える。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度までに構築した「種痘人取調書上帳」古文書画像データベースと「種痘人取調書上帳」分析プログラムにもとづいて、最終年度に集中的に歴史GISの開発を実施する方針に変更した。そのため、研究分担者の分担金を平成27年度に持ち越す。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度までに構築した「種痘人取調書上帳」古文書画像データベースから牛痘種痘法の普及過程と天然痘罹患者の変化を時空間分析するため、天然痘済・初種接種済・再種接種済・三種接種済・種痘未接者の構成比、種痘医ごとの初種・再種・三種接種者の分布、天然痘罹患者数などの時系列変化をアニメーション表示する歴史GISを開発する。
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備考 |
本サイトは、17-19世紀に日本で作られた「宗門改帳」、寺院が保存している「過去帳」、明治維新直後に作成された「戸籍」、および「種痘人取調書上帳」の古文書画像データベース、人口・家族を分析するプログラムなどから構成されている。本研究で構築中の「種痘人取調書上帳」分析システムも、DANJUROの構成要素となる。
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