研究課題/領域番号 |
25280124
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
宇佐川 毅 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (30160229)
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研究分担者 |
苣木 禎史 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (50284740)
中野 裕司 熊本大学, 総合情報基盤センター, 教授 (40198164)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 学習支援システム / eラーニング / Moodle / 学習コンテンツ同期 / 情報通信網 / 中山間地 / 開発途上国 / インドネシア |
研究概要 |
ネットワーク環境が整備された環境では,ユニバーサルな教育機会の提供にeラーニングが大きな役割を担うが,ブロードバンド環境の整備されていない地域では,このような教育機会を広く提供することは容易ではない。このような問題を解決するために,学習支援システム間で学習コンテンツの同期を取ることのできる「ユニバーサルeラーニングシステム」の構築を目指し,平成25年度は以下のような研究活動を行った。 独立型利用形態での同期システムのMoodle 2.Xシリーズ(実際には2.1から2.5)への移植し,同一バージョン間での同期を実現した。さらに,異なるバージョン間の同期の可否について検討し,小テストの一部に加えられた大規模な仕様変更を除き,同期が実現できることを確認した。一方,パプアニューギニア,ツバル,トンガ,フィジー,インドネシア,モンゴルからの留学生を中心に出身国教育機関でのコンテンツ開発を日本から支援しており,コンテンツ開発に平行する形で同期システムの導入について検討を進めてきた。 そのような検討を進めるにあたり,初年度は発展途上国側でのクライアントのみならずサーバLMS構築を支援を目的とし,システム導入および管理ソフトウェア環境の整備を行ってきた。当初,インドネシア国立スラバヤ工科大学および国立サムラトランギ大学における講義での利用を想定したシステムの試験運用を,次年度以降に実施できるように準備を進めてきたが,コンテンツ活用の各大学の考え方や言語選択の問題等で,平成25年度終了時点では具体的な予定を確定するまでには至っていない。 さらに,ICカード型学生証を利用した出席登録システムをMoodleのモジュールとして開発しその有効性を実際の講義の中で確認した。このシステムは,キャンパス内学生の就学状況の把握や遠隔地での学習者への支援などに活用できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時点で平成25年度に実施すると計画として内容のうち,異なるバージョン間の学習コンテンツ同期を含め,システム的には当初想定通りの進捗と考える。 また,学習コンテンツの開発を通じての国際的な協同研究については,当初想定のインドネシア,パプアニューギニア,トンガ,モンゴルに加えフィジーとの連携も進めており,この点では当初予定を超える成果となった。 一方,海外高等教育機関との学習コンテンツの同期については,学習コンテンツの共有等について教員・機関の調整などから,当初目標を完全には到達できていない。 しかし,教育基盤として学習者の学習行動の把握のために必要となる出席管理を,学習コンテンツと連携させるシステムを構築し,一部講義ではあるが試験運用を行った。出席管理情報と学習進捗内容の連携・相互参照は,教育内容の充実からも重要であり,この点では当初予定を超える進捗があったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には申請時の研究計画に沿った形で研究を展開するが,前年度までに開発を終えた遠隔同期システムの活用に加えICカードによる出席管理と学習コンテンツの活用に基づき就学状況に関する情報の統合を含め,研究を進める。 まず,「協調型利用形態」でのコンテンツ同期システムを,ソーシャルネットワークとLMSを連携することを想定して,Moodle上に構築を目指す。当面,Moodle間の双方同期を実現するためのメカニズムを完成させる。なお,ソーシャルネットワークを含め,途上国においてネットワーク環境で協調学習を実現するには,携帯電話網の活用は不可欠であるが,その利用状況等は国毎に,さらに地域毎にも大きく異なるため,共同研究先との連携を密にし,実状に合う形でのシステム構築を進める。 一方,「独立型利用形態」でのコンテンツ同期システムにては,大学や中等教育機関での講義での利用を想定し,セメスター単位での実証となるため,多くの場合年2回,場合によっては年1回の試験運用のチャンスしかない。その際,種々のリスク要因や各大学のセキュリティーポリシー等に配慮した形で,教育自体を遠隔に進めるためのバックアップ体制等についても,十分に共同研究先と協議した上で,試験運用を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では,平成25年度マスターLMS用サーバ2台(合計80万),ソフトウェア開発用PC3台,クライアントPC5台の導入を計画していた。マスターLMS用サーバについては,仮想化技術を利用できる用メモリを強化したシステムを2台(合計約85万)を研究の進捗に合わせ時期をずらしてほぼ予定金額で導入した。またソフトウェア開発用PCについても2台(合計19万)を導入した。一方,今年度は海外大学との同期試験に先立ち,研究室内でのコンテンツ同期を仮想計算機相互に行うことで実証を行ったためクライアント用PCの購入については,今年見送った。 また旅費に関しては,学生の旅費を大学院による各種基金による旅費支援等を活用することで学生への支援を低く抑えることができた。 平成25年度導入予定であったソフトウェア開発用PCの追加1台,クライアント用PC5台については,平成26年度の導入を想定している。ただ,同時に購入するのではなく,順次導入することで,少しでも性能の高いものを導入することを想定しており,具体的な活用時期を見たうえで,購入時期を判断する予定である。 旅費については,本年度も計画的に学会発表を行うことで,平成25年度分を含め支出する予定である。ただし,大学院生については,将来履歴に記載可能な競争的資金による旅費支援が受けられる可能性がある場合は,その申請を行うことも,これまで通り進めていく。 謝金については,基本的には英文校閲等を想定している。
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