研究課題/領域番号 |
25280127
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
常盤 祐司 法政大学, 情報メディア教育研究センター, 教授 (70434181)
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研究分担者 |
喜多 敏博 熊本大学, eラーニング推進機構, 教授 (20284739)
出口 大輔 名古屋大学, 情報連携統括本部, 准教授 (20437081)
梶田 将司 京都大学, 学術情報メディアセンター, 教授 (30273296)
宮崎 誠 畿央大学, 教育学部, 特任助教 (60613065)
平岡 斉士 熊本大学, 大学院社会文化科学研究科, 准教授 (80456772)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 翻訳メモリ / オープンソースソフトウェア / 国際化 / 大学教育 / eポートフォリオ / 授業支援システム |
研究実績の概要 |
本研究では大学向オープンソースソフトウェア(以下,OSS)で使われる用語を統一するため,大学向共通翻訳メモリの開発を行うとともに,この翻訳プロセスを国内外のコミュニティに展開することを目的としている.なお翻訳メモリとは英語の原文と日本語の翻訳文がセットとなったXML形式のデータベースである. 2014年度は,共通翻訳メモリを開発し,その共通翻訳メモリによってSakaiの翻訳を行った.そこで得られた知見については2015年4月に出版された情報処理学会デジタルプラクティスにて報告を行った.また共通翻訳メモリ開発に際しては,翻訳メモリエディタを開発し2015年5月に開催される情報処理学会CLE研究会にて報告する予定である. これらの翻訳に先立ち,8月には本研究メンバを中心とした2日間のアンカンファレンスを京都大学にて開催し,それぞれのコミュニティにおける翻訳の現状などについて報告を行うとともに,実際にTransifexによる翻訳を体験するWorkshopを行った. また,それぞれのOSSを開発するコミュニティに対する活動として,米国マイアミにて開催されたSakaiコミュニティの年次大会であるOpen Apereo 2014 Conference (2014年6月)に参加し,翻訳メモリを使ったコミュニティ翻訳のデモを行った.このデモが契機となりSakaiスペインチームとの共同翻訳作業がスタートした.この共同翻訳基盤として翻訳支援システムを提供している米国Transifex社と交渉し,無償で翻訳基盤を提供してもらうことになった. 一方,国内ではMahara Open Forum 2014(2014年9月),大学ICT推進協議会年次大会(2014年12月),MoodleMoot Japan 2015(2015年2月)において本プロジェクトで開発している手法の提案を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学向共通翻訳メモリを開発し,Sakai, Moodle, Maharaコミュニティにて展開することができたことから,おおむね順調に進展しているとした. 共通翻訳メモリの開発には,Sakai, Moodle, Maharaを翻訳し,それらを単に結合すればできるというわけではなく,同一英語ソースに対して,複数の日本語翻訳が存在するため,翻訳メモリにおいては日本語翻訳の浄化が必要となる.ただし,英語ソースと日本語翻訳からなる翻訳ユニットは30,000組を越えるため,これらを効率的に検索し,編集する翻訳メモリエディタが必要である.しかしながら既存の翻訳メモリエディタはせいぜい1,000組を対象としており,検索機能や編集履歴機能の点から十分ではないため,エディタそのものも開発を行った.こうして本プロジェクトで目指している「大学向共通翻訳メモリ」を開発することができた.翻訳メモリおよび翻訳メモリエディタの開発については,それぞれ情報処理学会に論文として投稿した. また,コミュニティへの展開であるが,Sakaiコミュニティの年次大会におけるデモが契機となり,当プロジェクトで提案している翻訳基盤を用いたスペインチームとの共同翻訳を実現できた.この翻訳基盤では,日本語,Spanish,Catalan,Basque語での翻訳が行われている.また,当プロジェクトで利用してきた翻訳支援システムを提供しているTransifex社との交渉の結果,Sakaiコミュニティに対して月額3200ドルの新たな翻訳基盤を無償で提供してもらうことができ,Sakaiコミュニティへの展開の基盤を構築できた.また,MoodleおよびMaharaの国内コミュニティ年次大会では本プロジェクトで考案された翻訳方法について提案を行った.これらの活動を通じてコミュニティへの展開の礎を築くことができた.
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今後の研究の推進方策 |
今年度が最終年度となるので,本プロジェクトで対象としている教育用オープンソースソフトウェアであるSakai, Moodle, Maharaについて共通翻訳メモリを使って翻訳するとともに,国内外への成果の展開を行う. Sakaiについては国際コミュニティが運用しているgithubで管理されているソースコードに対して本プロジェクトの日本語翻訳をPull requestsし,その後の継続した日本語翻訳反映の方法を確立する.また,MoodleおよびMaharaについてはLanguage Packを開発し,Webサイトで公開する. 成果報告および展開の場として,国際的にはSakai, Moodle, Maharaコミュニティで開催される年次大会におけるセッションでの報告あるいはデモを行う.国内では2014年12月に開催した大学ICT推進協議会の企画セッションを発展させ,海外からゲストスピーカを招聘する国際シンポジウムを計画している. 出版物としては,オープンソースソフトウェア翻訳に関わる国内外の開発者向けに日英版の翻訳ガイドブックを作成する.また,3年間のプロジェクトにて得られた成果物は,プロジェクト開始当時から稼働しているプロジェクトWebサイトに整理して掲載し,一般公開する.
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額が生じた主たる理由は,翻訳支援ツールのレンタル費用が低コストで契約できたこと,海外出張費が低コストで済んだこと,および外部業者に依頼する予定であったWeb画面の翻訳確認を学内の研究支援者への謝金に変更したことによる.
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額は国際シンポジウムにて招聘する海外からのゲストスピーカの航空運賃あるいは国内交通費などの旅費あるいは講演時通訳,および成果を公開するためのWebサーバ設備備品費などに充当する.
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