研究課題/領域番号 |
25280131
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安田 孝美 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (60183977)
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研究分担者 |
遠藤 守 中京大学, 工学部, 准教授 (90367657)
岩崎 公弥子 金城学院大学, 国際情報学部, 准教授 (50345427)
水野 慎士 愛知工業大学, 情報科学部, 准教授 (20314099)
浦田 真由 名古屋大学, 国際開発研究科, 助教 (70634947)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | デジタルミュージアム / ヴァーチャルミュージアム / 天文教育 |
研究概要 |
本研究では,スマートデバイスとソーシャルネットワークの融合による,ミュージアムにおける新たな生涯学習向け天文教育プラットフォームの開発と応用を目的とする.特に,本研究の柱となるスマートデバイスは近年急速に普及が進む情報端末であるが,その情報端末に必要とされる機能や実社会での利活用の場面においては,より一層の教材としての可能性の検討と,試作・実証実験に基づく検証が求められている.本研究においては既製の情報端末が抱える機能的制限を取り払い,かつ高度化したネットワークシステムを基盤とする天文教育のためのプラットフォームを開発する. 初年度となる平成25年度には,本研究の基盤となるスマートデバイスを軸とした各種デバイス・システム開発を行うことにより,天文教育のためのハードウェア設計開発を中心としたプラットフォームの構築を行った. 具体的な実績として,これまで開発してきた,組み込み技術に基づくセンサ・デバイスの制御手法,通信インタフェースの構築手法に関する成果を基に,従来型の情報端末に搭載されない各種センサ・インタフェース等の自由な搭載を実現する拡張可能な通信インタフェースの設計開発を行った.これらの成果により教材利用者が用いるスマートデバイスの新たな使い方として,野外学習などにおける環境データの収集や,学習効果を高める特殊センサなどによる計測環境が実現した. また,計測データ・資料の収集・蓄積や科学技術計算の負荷分散,教材コンテンツの蓄積やシステム利用者が収集したデータを効果的に蓄積することを可能にするネットワークシステムの開発を行った.同時に,役割の異なる組織間における即応性・可用性の高い情報の相互共有手法のあり方について,その有効性及び可能性を運用試験等を通じて明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,次世代スマートデバイスの開発とソーシャルネットワークの融合による生涯学習を考慮した天文教育用プラットフォームの構築を目的としている. 初年度となる平成25年度には,主に本研究の基盤となる,1)デバイス開発,および2)ネットワークインフラストラクチャ構築,などのハードウェアを中心とした設計開発を重点的に進めてきた. 1においては,Bluetooth技術を中心とする無線通信技術を活用したタブレット端末用デバイスの開発や,またKinectに代表される深度センサを活用したハードウェアシステムの開発などを行った.これらの成果を活用することにより,従来のスマートデバイスのみでは実現しえなかった新しい活用法が提案できると考えられる.本年度は具体的に,生涯学習を円滑化する電子教材デバイス用通信モジュールの開発,ならびに,深度センサと運動視差を用いた三次元CG天体ビューアの開発を重点的に行い,児童館や名古屋市科学館において実証試験を繰り返すことで,一定の成果を得ることができた. また2においては,科学館などがネットワークシステムを構築する際に必要となる,利用者にとって安心・安全なイントラネットシステムの構築に際し,来館者の持ち込みデバイスを動的にイントラネットに接続することを可能にするシステムの設計開発を行った.さらに,屋外における生涯学習を前提とし,インターネットを基盤とする情報共有サービスを可能とするシステムの設計と試作を行った.具体的な事例として,ネットワーク共有型の展示解説支援システムの開発や,来館者の思い出をスマートデバイスとの連携によって入力・閲覧を可能とするネットワークシステムの構築,さらに屋外における生涯学習を考慮したネットワーク透過型のフォトラリーシステムの構築などがある.これらは名古屋市科学館や屋外フィールドでの複数回にわたる実証試験によって,一定の有効性を確認している.
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今後の研究の推進方策 |
開発されたデバイスおよびネットワークシステムについては,今後の研究を推進する中で必要に応じて改良・拡張する予定である. 初年度に開発したこれらの研究成果を最大限活用することを念頭に,次年度においてはソフトウェアおよびコンテンツの開発を中心に研究を推進する.その際,生じた課題や問題の原因が開発ハードウェア・システムに起因するものであり,かつその修正や改良が比較的容易な場合には,その時点で最良かつ効果的な解決手段を用いて適宜,修正および改良を加えつつ開発を進める. なお次年度において現在開発を検討している具体的なソフトウェアやコンテンツの例として,例えば科学館などに興味を持つ人々に対し,開発したスマートデバイスやシステムを用いることで,必要な情報へのスムーズな誘導を実現するネットワーク的手法によるソフトウェアフレームワークの開発や,これに付随するデジタル教材の提案,またオープンデータ・ビッグデータなどとの連携を可能にするアプリケーションフレームワークの設計開発や,これらを用いた展示コンテンツの開発を検討している. なお,研究期間最終年度には,開発したハードウェア・ソフトウェア等を用いた中~大規模な実証実験を実際の科学館などのミュージアムにおいて行うことを予定している.このため,各年度に開発された個々の成果物については,当該年度中に十分な運用試験を実施し,最終年度の実証実験において問題が生じないよう細心の注意を以て研究を推進する. さらに,研究を推進する中で得られた研究成果や知見については,適切なタイミングで研究発表等を行い,特に重要な成果が得られた際には国際会議論文や学術雑誌論文等に積極的に投稿する予定である.
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