地球規模の海洋オーバーターンをになう底層の南極起源の海水は、近年、淡水化しつつあると指摘される。南極大陸沿岸で生まれる海水が全大洋底層の水のもとの一つとなるので、この沿岸海洋の変質の実態を把握して淡水化の原因を探るために、酸素の同位体をつかった特殊なトレーサーを含む観測研究を推進した。オーバーターンの起点となる海域の一つであるロス海沿岸部は淡水化しているが、これは西南極海洋の暖水化と同期していた。もう一つの起点であるアデリーランド沿岸では、海氷生産の減少に加えて氷床融解成分の増加がみられた。これらより、大規模とローカルな氷況変化の両方が淡水含有量に大きな影響を与える可能性が明らかになった。
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