研究課題
基盤研究(B)
ボルネオ島における土地利用変化が局地気候、特に降水量にどのような影響を及ぼすかを知るためには、1)土地利用変化前後の大気陸面交換過程の観測データの取得・解析、2)ボルネオ島全域を対象とした土地利用改変後の局地気候変化をシミュレートするモデルの開発とそれを用いた数値実験、を行う必要がある。1)に関しては、平成25年度においては、特にボルネオ天然林(原植生と考えられる)の長期連続・高精度観測データの取得に成功している。平成25年度において、最も注力されたのは、2)シミュレーションモデルによる数値実験の実行であった。基本モデルとしては、名古屋大学で開発されたCloud Resolving Storm Simulator (CReSS)と米国のNational Center for Atmospheric Research (NCAR)等で開発されたWeather Research and Forecasting model (WRF)を利用した。特に、WRFで用いられている複数のスキーム(陸面モデル、PBLモデル、雲物理モデル)について計算結果がどのように変わるのかを調べた。検証データとしては、TRMM-3B42を利用した。また、降水量の計算において格子幅が及ぼす影響を調べるため、格子幅を3.5km以外に5.0km、2.5kmとした場合の計算も行った。結果、現段階では、計算対象時間が2ヶ月程度であり十分ではないため、結論も確定的であるとは言い難いが、適正計算格子幅(=3.5㎞)や適正計算スキーム群が決められた。
2: おおむね順調に進展している
本課題の最終目標は、大気循環の変化の影響を受けて降水量の減少が進む東南アジア熱帯・ボルネオ島において、この乾燥化はボルネオ島全体の森林減少により加速されているという仮説を検証することである。この目的のために、平成25年度の研究計画では、数値シミュレーションの実行を確実にするために観測データを確保することを第一義としていた。しかし、実際には、シミュレーションモデルの開発が予想を超えて進んだ。一方で、予想よりも観測データの確保に関しては予定の達成度に対して80%程度であったと考えている。
ボルネオ島の降水量は年々変動が大きく、これに合わせて大気-植生間交換過程も年によって大きく異なる可能性がある。アブラヤシの「熱・水・二酸化炭素交換過程」の年々変動は未だ明らかではなく、このような年々変動は、ある程度の連続計測期間をもって明らかにされるものであり、よって、平成25年度計画で挙げたルーチン観測計画は平成26年度も継続される必要がある。また、上述したように、平成25年度の観測データの確保計画は、元来予定していたよりも進んでいないこともあり、観測データの取得にはより注力されねばならないだろう。観測データ確保により、特に、世界で最も湿潤気候にあると言われる本地域において、年々で変わりうる大気・土壌水分環境にアブラヤシ個体・林分の「熱・水・二酸化炭素交換」がどのように対応しているのかという貴重なデータを得ることができることに注目されたい。シミュレーションモデル開発、数値実験実行に関しては、これこそが最終目的なので、これまで通りの力を注ぐ。
観測サイト(ボルネオ島におけるオイルパームサイト)の充実が、マレーシア・サラワク政府側との交渉の不備もあり、当初想定していたように進まなかった。そのため、この観測サイト充実に使用する予定であった支出が大きく抑制されるに至った。平成25年度に予定していた観測サイト充実を遅れを取り戻す形で進める予定である。特に購入予定であった機器を平成26年度で購入し、順次観測サイトに設置していく予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Hydrological Processes
巻: 27 ページ: 3811-3814
Journal of Plant Research
巻: 126 ページ: 505-515