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2014 年度 実績報告書

植生の人為改変はボルネオの気候を変えている?

研究課題

研究課題/領域番号 25281005
研究機関名古屋大学

研究代表者

熊谷 朝臣  名古屋大学, 地球水循環研究センター, 准教授 (50304770)

研究分担者 藤波 初木  名古屋大学, 地球水循環研究センター, 助教 (60402559)
安成 哲三  総合地球環境学研究所, 研究部, 所長 (80115956) [辞退]
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード土地利用変化 / 気候変動 / 森林 / 熱帯雨林 / 東南アジア
研究実績の概要

ボルネオ島を対象として、地表面被覆が変化した場合の降水量への影響に関する予備的数値実験を行った。実験に用いたモデルはWRF-ARW v3.5.1である。計算領域はボルネオ島とその周辺の海域を含む領域であり、第一モデル領域の格子幅を17.5 km、第二モデル領域の格子幅を3.5 kmとした。解析期間は2004年4月1日から30日の30日間とした。行った実験は、実際の土地被覆状態を仮定した実験(Case1)、標高が100 mより低い土地(全陸地の約36%)の被覆を荒地に変えた実験(Case2)、そしてボルネオ島全体の土地被覆を荒地に変えた実験(Case3)の3通りである。実験の結果、Case2では、低地における蒸発散量の減少に伴い、OLRの増加と可降水量の減少がみられ、低地だけでなく山地においても減少がみられた。また、Case3では、これらの変化量は大きくなった。ただし、陸上の平均可降水量の減少量は数kg m−2程度であった。Case2・3における蒸発散量と降水量がCase1に対しどれだけ変化したかについて、場所による違いをみると、土地被覆を荒地に変えた場所では、蒸発散量が約54−66 %減少し、低地と山地の違いは大きくなかった。これに対し、降水量の変化は、Case2では、低地における降水量は約22−34 %の減少であったのに対し、被覆変化のない山地においても、標高500 m以下では約14−20 %の減少であった。標高500m以上では変化は小さかった。Case3では、低地における降水量は約35-56 %の減少であったのに対し、山地においては、標高が500 m以下では約43−54 %の減少、標高が500 m以上では約38−40 %の減少となり、標高の高さとともに降水量の減少量が大きい傾向がみられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本課題の最終目標は、「大気循環の変化の影響を受けて降水量の減少が進む東南アジア熱帯・ボルネオ島において、乾燥化はボルネオ島全体の森林減少により加速されているという仮説を検証する。そして、気候変動に伴う降水量減少と森林衰退の相互作用系を明らかにする。」である。目標達成のためには、最終的にはシミュレーションモデルの構築とそれによる数値実験が必要となるが、本年度、その大部分が達成された。
一方、シミュレーションモデルを確かなものにするために必要な実データの取得に関しては、予定よりも進展が遅かった。
以上を総合的に判断した結果は、達成度80%程度と考えている。

今後の研究の推進方策

ボルネオ島の降水量は年々変動が大きく、これに合わせて大気-植生間交換過程も年によって大きく異なる可能性があるこのような年々変動は、ある程度の連続計測期間をもって明らかにされるものであり、よって、これまでの計画で挙げられているルーチン観測計画は続行されなければならない。これにより、特に、世界で最も湿潤気候にあると言われる本地域において、年々で変わりうる大気・土壌水分環境に陸面過程(熱・水・二酸化炭素交換)がどのように対応しているのかという貴重なデータを得ることができる。
客観解析データ・土地利用変化マップの整理を含む現実のデータ確保は、局地気候モデルを用いた土地利用変化・植生改変による局地気候の変化の再現シミュレーションに反映される。現況の大気-陸面過程や過去50年間の降水量の変遷といった再現シミュレーションの正当性確認が行われ次第、将来の土地利用変化・植生改変や気候変動条件下での予測シミュレーションを行う。さらに、「乾燥ストレスによる森林崩壊・衰退モデル」を局地気候モデルに組み込む作業を開始し、順次、植生変化と局地気候変動の相互作用の検討のための数値実験に挑戦する。

次年度使用額が生じた理由

マレーシア・サラワク政府との交渉の不備、マレーシア側カウンターパートとの齟齬のため、計画通りの観測が進まなかった。そのため、予定していた観測機器・設備の購入が行われなかったため、当該年度の支出に抑制がかかった。

次年度使用額の使用計画

昨年度に進める予定であった観測を補填する形で今年度進める予定である。そのために不足している観測機器・設備を順次購入する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件)

  • [雑誌論文] Environmental control of canopy stomatal conductance in a tropical deciduous forest in northern Thailand2015

    • 著者名/発表者名
      Igarashi, Y., Kumagai, T., Yoshifuji, N., Sato, T., Tanaka, N., Tanaka, K., Suzuki, M. and Tantasirin, C.
    • 雑誌名

      Agricultural and Forest Meteorology

      巻: 202 ページ: 1-10

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Vertical variations in wood CO2 efflux for live emergent trees in a Bornean tropical rainforest2014

    • 著者名/発表者名
      Katayama, A., Kume, T., Komatsu, H., Ohashi, M., Matsumoto, K., Ichihashi, R., Kumagai, T. and Otsuki, K.
    • 雑誌名

      Tree Physiology

      巻: 34 ページ: 503-512

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Implications of leaf-scale physiology for whole tree transpiration under seasonal flooding and drought in central Cambodia2014

    • 著者名/発表者名
      Miyazawa, Y., Tateishi, M., Komatsu, H., Iwanaga, F., Mizoue, N., Ma, V., Sokh, H. and Kumagai, T.
    • 雑誌名

      Agricultural and Forest Meteorology

      巻: 198-199 ページ: 221-231

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Tropical tree water use under seasonal waterlogging and drought in central Cambodia2014

    • 著者名/発表者名
      Miyazawa, Y., Tateishi, M., Komatsu, H., Ma, V., Kajisa, T., Sokh, H., Mizoue, N. and Kumagai, T.
    • 雑誌名

      Journal of Hydrology

      巻: 515 ページ: 81-89

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Radiative and precipitation controls on root zone soil moisture spectra2014

    • 著者名/発表者名
      Nakai, T., Katul, G. G., Kotani, A., Igarashi, Y., Ohta, T., Suzuki, M. and Kumagai, T.
    • 雑誌名

      Geophysical Research Letters

      巻: 41 ページ: 7546-7554

    • DOI

      10.1002/2014GL061745

    • 査読あり / 謝辞記載あり

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公開日: 2016-06-01  

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