研究課題
SMILES(超伝導サブミリ波リム放射サウンダ)は,2009年10月から約半年間ではあったが中層大気の超高感度観測を行った.この研究課題では,SMILESから得られた高精度データに基づいてオゾン変動の要因を明らかにし,地球大気質変動をもたらす化学プロセスの解明を目指した.さらに微量成分分布を導出する際に問題となる不確定要素を吟味し,より信頼性の高い観測データを得ることを目的とした.高精度観測を行ったSMILESならではの事例研究として,2010年1月15日に起こった部分日食時に,SMILESは中間圏のオゾン量が増加する様子を見事に捉えた.ボックスモデルを用いた解析から,このイベントはオゾン光化学の基本メカニズムを理解する上でよい例となっていることが明らかになった(Imai et al., 2014).モデルを用いた検証あるいは現象の理解という観点から,2010年1月に起こった成層圏突然昇温時のSMILESによる北半球中高緯度下部成層圏の大気微量成分濃度の観測値と化学輸送モデルの計算値との比較を行った.モデルは突然昇温時のオゾンやHCl, ClO濃度分布の急激な変化をよく再現しているが,極渦内下部成層圏のClO濃度は,SMILESによる観測値と比較すると30%程度低いことが分かった(Akiyoshi et al., 2016).データ導出にあたっては分子スペクトル線の詳細な理解が必要である.ここでは亜酸化窒素のサブミリ波帯純回転スペクトルの精密測定を行い,モデル関数の適合性を検証した.従来のVoigt型関数に比べて,分子の衝突緩和の非線形効果を取り入れたGalatry型ないしは速度依存Voigt型関数はより精度よく残差を押さえ込めることが分かった.さらにGalatry型は高圧でモデル自体が破たんするため,亜酸化窒素のスペクトル線形状モデルとしては速度依存型Voigt関数が最も適していることが分かった.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 10件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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