研究課題
森林生態系における水循環は、渓流水の水質を調節する重要な役割を果たしている。しかし水質を決定付ける重要な因子である溶存有機物(DOM)は、複雑な生成メカニズムで生じる多様な炭素化合物の集合体であり、その分子組成や、組成変化に影響をもたらす要因を明らかにすることは技術的に困難であった。本研究では、森林生態系におけるDOMの組成とその変遷を明らかにするため、天然水の分析には殆ど用いられてこなかったフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析器(FT-ICRMS)など、化学分析を用いたDOMの分子種の推定によって、森林生態系の水質形成過程を明らかにすることを目的としている。本年度は、昨年度までに作られたFT-ICR MSのマススペクトル解析のプロトコルを用いて、実際に兵庫県内の林内雨とフィンランドの森林水の分析を用いた。前者については、ヒノキの針葉樹林とコナラが優占する広葉樹二次林の二つのタイプの森林について、林内雨を採水し、降雨と林内雨で溶存有機物の組成がどう異なるかをFT-ICR MSによって明らかにした。さらに二つの森林タイプ間に置いても、溶存有機物の組成が異なることを、同手法を用いることで初めてしめすことが可能となった。これらの成果は日本生態学会で発表した。フィンランドの森林水では、降雨から林内雨、土壌水、河川水と水が循環することで、溶存有機物の種数が大きく変化すること、さらにこれらの種数の変化が難分解性の溶存有機物の種数変化に支配されることを新しく示した。この成果は専門の国際誌に発表した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
巻: 7 ページ: 42102
10.1038/srep42102