研究課題/領域番号 |
25281014
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
小林 秀樹 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球表層物質循環研究分野, 主任研究員 (10392961)
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研究分担者 |
井上 智晴 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球表層物質循環研究分野, ポストドクトラル研究員 (20608822)
市井 和仁 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球表層物質循環研究分野, 主任研究員 (50345865)
永井 信 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球表層物質循環研究分野, 主任研究員 (70452167)
楊 偉 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球表層物質循環研究分野, ポストドクトラル研究員 (80725044)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リモートセンシング / クロロフィル蛍光 / 植生構造 / 生物季節 |
研究実績の概要 |
今年度は昨年度に引き続き単木レベルのクロロフィル蛍光、クロロフィル指標、光合成、高波長分解能分光スペクトルなどの季節変化の観測を1-2週間おき実施した。また日本の高山サイトとアラスカのポーカーフラットサイトおよびアラスカ・ハイウェイ沿いの数地点においてデジタラルカメラによるフェノロジー撮影した。ポーカーフラットサイトでは2時期(9月と3月)に分光計測を行った。アラスカでは、葉群バイオマスの季節性には、積雪期間に影響を受ける林床の植生フェノロジー(植物季節)が重要であることが明らかになった。加えて、毎日観測した衛星データを用いて、日本とアラスカにおける着葉期間の空間分布の年々変動をマッピングした。着葉期間の時空間マップの構築など、潜在的な光合成期間と光合成生産量を広域的に推定するための重要な基礎データが構築できた。蛍光を数値計算するための放射モデルFLiESの開発に関しては、昨年度に引き続き計算コードの改善を進めるとともに、昨年度取得したLiDARデータから葉面積密度の格子データを作成し、そのデータを入力値としてクロロフィル蛍光の三次元分布やクロロフィル蛍光の2方向性反射率計算などを行った。その結果、近赤外域における森林からの上向きクロロフィル蛍光輝度には、森林の形状に依存するものの、10%程度の多重散乱成分が含まれることが明らかとなった。こうした成分は、蛍光と光合成量を結びつける際には、誤差要因となることから衛星などで観測される蛍光輝度値の利用については注意が必要であることが明らかとなった。ビックリーフタイプの生態系モデルについては、モデルのシミュレーションに必要な気象・衛星データなどの収集にめどがつき、衛星データを利用して不確実性を低減させた光合成量のデータセットの構築が進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の観測調査に関しては、概ね予定通りに実施することができた。単木レベルの観測では平成25年度の予備調査の実施状況を勘案し、超光波長分解能分光計HR4000における葉のクロロフィル蛍光観測を葉の表面だけでなく裏面についても実施して葉の両面からの蛍光輝度のデータを収集した。また、アントシアニンメーターを新たに購入し、葉内のアントシアニン色素の季節変化の計測も実施しその季節変化を得た。アラスカにおける観測でも林床の状態の異なる2時期において分光観測を行うとともに、多点における植生フェノロジー情報を得ることができた。三次元放射モデルFLiESにおけるクロロフィル蛍光計算については、平成25年度に取得したLiDAR点群データからボクセル(格子)情報を抽出し、そのデータと単葉レベルの蛍光データを組み込んで樹冠上端及び樹木の三次元クロロフィル蛍光シミュレーションを実施することができた。一方で、LiDAR点群データをボクセル化する作業や放射モデルへの読み込みモジュール開発に時間がかかり、光合成モジュールとの結合まで行うには至らなかった。光合成モデルの結合作業については、平成27年度に引き続き実施するものとしたい。ビックリーフタイプの生態系モデルについては、モデルシミュレーションに必要な気象・衛星データセットなどの収集が予定通り進み、光合成量の初期的なデータセットの構築が終わり、研究を順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究によりクロロフィル蛍光や光合成、植物の季節変化などの観測調査に関しては順調に推移している。最終年度となる平成27年度も引き続き同様の観測を単木レベルとアラスカのポーカーフラット調査地などで実施し、モデルの入力・検証データとなる情報を得る。また、国内外の学会や学術論文などでの成果の公表を進める。三次元放射モデルのクロロフィル蛍光輝度値の計算については、今までの検討結果が概ね妥当な計算値が出力できるところまで来た。一方で、光環境―クロロフィル蛍光―光合成系のモジュール開発については、若干の遅れがあるため、平成27年度の前半に関してはこの開発とモデル検証に重点的に取り組む予定である。最終年度の後半は、この三次元放射モデルの開発とビックリーフタイプの生態系モデルによる光合成との比較についてより重点的に研究を実施する予定である。研究代表者が担当する他のプロジェクトで全球の土地被覆タイプごとの典型的な三次元森林景観データセットを構築することができた。このデータを用いることで単木レベル及びアラスカの調査サイトの景観レベルだけではなく、広域スケールでの比較が実施できるものと考えている。またこれらの解析結果を国内外のリモートセンシング関係、地球科学関係の学会で公表し、学術論文への投稿を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたアラスカ調査の人員が1名減ったため旅費に未使用額が生じた。また、日射計、光合成測器などの機器の劣化などによる修理・新規購入用を計上していたが大きなトラブルがなく、観測機器にかかる経費にも未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
アラスカ調査および測器の新規購入に充当する。
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