研究課題/領域番号 |
25281018
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
倉岡 功 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (60335396)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | DNA修復 / トポイソメラーゼ阻害剤 |
研究概要 |
トポイソメラーゼ阻害剤は、有望な抗がん剤、抗生物質として広く使用されている。この阻害剤は、トポイソメラーゼの再結合を阻害することで、チロシンを介したタンパク質クロスリンクおよび一本鎖DNA切断を伴うDNA損傷を導き、この損傷が細胞を死に至らしめると考えられている。しかし現在、この薬剤に耐性細胞が生じることが問題となっている。 この本研究は、この一本鎖DNA切断を伴うタンパク質クロスリンクが生体内でどのように修復されるのか?その分子機構を生化学的かつ細胞生物学的に解析して行くことを目的とする。トポイソメラーゼ阻害剤は、それぞれトポイソメラーゼI型の阻害剤カンプトテシン、またトポイソメラーゼII型の阻害剤エトポシドなどが存在する。さらにそれぞれのトポイソメラーゼがDNAの切断末端の3‘および5’にチロシンを付加することになる。 我々はこの2つのタイプのチロシンが付加したオリゴヌクレオチドを用いて、修復DNA基質を作製した。修復反応を無細胞系転写実験系で行ったが、基質の純度の問題が生じたため、オリゴヌクレオチド基質を用いてDNA切断反応を解析を行う方向に転換した。その結果細胞抽出液を用いて新たな修復切断活性を発見することができた。 現在、そのタンパク質の同定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トポイソメラーゼ阻害剤は、それぞれトポイソメラーゼI型の阻害剤カンプトテシン、またトポイソメラーゼII型の阻害剤エトポシドなどが存在する。さらにそれぞれのトポイソメラーゼがDNAの切断末端の3‘および5’にチロシンを付加することになる。 我々はこの2つのタイプのチロシンが付加したオリゴヌクレオチドを用いて、修復DNA基質を作製したが、基質の純度の問題が生じたため、オリゴヌクレオチド基質を用いてDNA切断反応を解析を行う方向に転換した。 この変更は、研究計画に記載された当初計画どおりに進まない時の対応で予測されたものであり、その結果研究全体としてはおおむね順調に進展していると言える。またその変更によって現在、新たな修復切断活性を発見することができたので、新しい研究展開に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、新規のDNA切断活性を担うタンパク質の同定を行う予定である。いまのところ幾つかの生化学的分画により候補タンパク質が発見できたが、さらに分画を行い、活性を担うタンパク質をマススペクトロメトリー解析により最終的に同定する。さらにタンパク質が同定された場合、そのcDNAを作製し、組換えタンパク質として生化学実験を行う。またこの組換えタンパク質により抗体を作製し、細胞でのそのタンパク質の挙動を解析する。 加えて、遺伝子改変によりそのタンパク質を欠損した細胞を作製し、トポイソメラーゼ阻害剤に対する細胞遺伝学的な解析を行う予定である。 一方、チロシン付加されたDNAを切断することができると予想され、かつ遺伝学的な解析により関与が示唆されているタンパク質を精製する。現在候補として考えられるエンドヌクレアーゼは、3’Flapエンドヌクレアーゼとして色素性乾皮症グループF群タンパク質複合体(XPF-ERCC1)、また同じタイプのヌクレアーゼMus81-Eme1、5’Flapエンドヌクレアーゼとしては、色素性乾皮症グループG群タンパク質XPG、Flap endonuclease1, SLX1-SLX4ヌクレアーゼなどが考えられる。これらの組換えタンパク質を調整し、それぞれの基質において切断活性を解析する。
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