トポイソメラーゼ阻害剤は、有望な抗がん剤、抗生物質として広く使用されている。この阻害剤は、トポイソメ ラーゼの再結合を阻害することで、チロシンを介したタンパク質クロスリンクおよび一本鎖DNA切断を伴うDNA損傷を導き、この損傷が細胞を死に至らしめると考えられている。 本研究は、このタンパク質クロスリンクを有する1本鎖DNA切断を生体内でどのように修復するか?その分子機構を生化学的および細胞生物学的に解析していくことを目的とした。 トポイソメラーゼ阻害剤は、それぞれトポイソメラーゼI型の阻害剤カンプトテシン、またトポイソメラーゼII 型の阻害剤エトポシドなどが存在し、さらにそれぞれのトポイソメラーゼがDNAの切断末端の3‘-および5’- にチロシンを付加することになる。この付加によるチロシンクロスリンク付加体切断末端がDNA損傷になると考えられる。 我々はこの2つのタイプのチロシンが付加したオリゴヌクレオチドを用いて、修復DNA基質を作製し、3‘-および5-’チロシンクロスリンク付加体切断末端の修復 に機能するタンパク質を探索した。その結果、ヌクレオチド除去修復タンパク質である構造特異的ヌクレアーゼERCC1-XPFおよびFEN1を発見した。それぞれ3'-チロシンクロスリンク付加体切断末端はERCC1-XPFにより、5’-チロシンクロスリンク付加体切断末端はFEN1により切断されることでDNA修復合成が可能であることを示した。我々はそれぞれの修復において新規の修復モデルを提唱した。
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