研究課題
本研究では、ゲノム安定性の維持に重要な働きをする複製停止トレランス機構の解明を目指し以下の研究を行っている。(1) 損傷部位での複製停止からの回復に関わる、損傷乗り越え経路における各種のポリメラーゼのネットワークの解明、(2) i-POND法による複製停止時にフォークに集合する蛋白質の解明、(3)質量分析手法と遺伝学研究を合わせた方法による複製停止領域でのポリメラーゼネットワークの解析、(4)DNA損傷に応答するユビキチン化ネットワークの解明。昨年度は、初年度に最適化したアッセイ手法を用い研究を行い、次の成果に繋がった。(1) 複製ポリメラーゼδの3番目のサブユニットp66はポリメラーゼζのサブユニットとしても機能し、損傷乗り越えの促進に寄与することが知られているが、p66がポリメラーゼζとは独立して損傷乗り越えに寄与することを発見した(Hirota et al Nucleic acids Res 2015)。(2)E3ユビキチンリガーゼ酵素RNF8やRNF4によるゲノムメンテナンスの新規分子機構を発見した(Kobayashi et al Oncogene 2015, Hirota et al Genes to Cells 2014)。さらに、ポリメラーゼネットワークの研究から複製ポリメラーゼ自身が損傷乗り越えに関わるデータや、複製末端に取り込んだチェーンタミネーターやリボ核酸の除去を行うことでゲノムメンテナンスに寄与することを突き止めており、論文発表のための準備を行っている。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定していた計画よりも多くの研究データを得ることができ、大きく研究が進展した。特にポリメラーゼネットワークの研究では、複製ポリメラーゼは損傷部位で停止するというドグマを打ち破る発見をしており(未発表)、学術的影響の大きな成果に繋がった。さらに、複製ポリメラーゼの校正エキソヌクレアーゼ活性による、複製末端の損傷除去機構を発見できた(未発表)。ポリメラネットワークとして、新規にポリメラーゼζとηの経路とリダンダントに複製ポリメラーゼδがゲノムメンテナンスに寄与することを見出している(未発表)。
H27年度は複製ポリメラーゼδ及びεによるゲノムメンテナンス機構として、(1)δによる損傷乗り越えの分子機構解明、(2)ポリメラーゼεの校正エキソヌクレアーゼ活性による複製末端の損傷除去の分子機構、の2点を重点的に解析する。昨年までに確立したi-POND法を用いて、以下の研究を行う。(1) ポリメラーゼζ及びηのない時にフォーク停止領域に蓄積するタンパク質をプロテオーム解析することで、ζ及びηと競合して損傷乗り越えし、これらの経路と相補的経路にあるタンパク質経路を包括的に調べる。(2) PCNAのユビキチン化できない変異体PCNA-K64R細胞で(1)と同様のi-POND解析することで、ユビキチン化経路に依存して停止フォークに動員されるものとユビキチン化非依存の動員タンパク質をカテゴライズする。このような解析により、複製フォーク停止トレランスにおけるポリメラーゼネットワークとユビキチン化経路を解明する。
26年度予定していた試薬の購入が延期になったため。
延期になった試薬の購入を行う予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (9件)
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