研究実績の概要 |
平成27年度は,TATAMのエキソン系に関して,チミジンキナーゼ遺伝子(TK)の変異を復帰させる陽性対照ターゲティングベクター,および復帰させられない陰性対照ターゲティングベクターの2種類の混合割合を規則的に変えて,TSCER122細胞に形質転換し,TK復帰頻度のレスポンスを調べた。陽性対照ベクターが0,0.1,0.2,0.6,2μgに対して,陰性対照ベクターはそれぞれ2,1.9,1.8,1.4,0μgを混合した。その結果,陽性対照ベクターの量に依存して,TK復帰頻度は上昇し,ほぼ直線性を示した。しかしながら,最小の陽性対照ベクター0.1μg(エキソン系では5%の変異頻度に相当)の時は,TK復帰頻度が陰性対照ベクター1.9μgのシグナルに埋没する傾向にあり,明確に差が得られないように見受けられた。これは,DNA付加体の誤塩基対形成頻度が5%程度ではエキソン系で検出できない可能性を示唆している。 in vivoで誤塩基対形成頻度の高いDNA付加体を探すために,8-ブロモグアニン,5-ブロモウラシル,およびウラシルをTATAMのイントロン系に供して調べた。8-ブロモグアニンはわずか2.4%しか突然変異を誘発せず,5-ブロモウラシルがこれまで調べた付加体のなかで最も高い突然変異誘発頻度(33.2%)を示した。ウラシルはin vitroでは高い誤塩基対形成頻度を示すが,in vivoでU:Gミスマッチペアの状態でゲノム導入したところ,予想以上にDNA修復されわずか8.1%の変異頻度であった。 遺伝子破壊細胞の構築に関しては,CRISPR/Cas9系およびZFNのゲノム編集技術によって,XPAおよびOGG1の欠損細胞を分離し,ウェスタンブロッティングや薬物等の感受性実験でフェノタイプの確認を行った。
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