研究課題/領域番号 |
25281024
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
鯉淵 典之 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80234681)
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研究分担者 |
竹下 章 公益財団法人冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (20322646)
高鶴 裕介 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30446265)
はい島 旭 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70555672)
岩崎 俊晴 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (80375576)
下川 哲昭 高崎健康福祉大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90235680)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脳発達 / 甲状腺ホルモン / 内分泌かく乱化学物質 |
研究実績の概要 |
胎生初期に構築された神経回路は発達期に再編成され機能的に成熟する。この際,神経・液性因子を介する環境からの刺激が不可欠である。液性因子ではステロイドや甲状腺ホルモンなど核内受容体(NR)と結合するホルモンが重要な機能をはたしている。また,NRは内分泌かく乱作用を有する化学物質の標的となる。しかし,NR作用のかく乱によりニューロンにどのような変化が生じ,高次脳機能異常につながるのか,統合的な解析は限られる。そこで,in vitroの分子生物学的実験を,モデル動物を用いた2光子励起顕微鏡によるシナプス動態の長期的観察,電気生理学的解析,および行動解析実験と組み合わせ,統合的に解析した。現在までの実績は以下のようである。 1)プルキンエ細胞の甲状腺ホルモン作用を抑制したマウス,及び先天性甲状腺機能低下マウスを用いて,行動解析,遺伝子発現解析,形態学的解析などを行い,甲状腺機能低下により,小脳発達が大きく影響を受けること,プルキンエ細胞のみの甲状腺機能を抑制しても,小脳全体の異常が生じることを確認した。 2)母子解離を周産期ストレスとして用い,脳内グルココルチコイドが上昇した状態で,ミクログリアの動態をレーザー多光子顕微鏡で観察し,ミクログリアの活性が上昇することを確認した。 3) 初代培養神経細胞(小脳および海馬)を用い,ホルモンや環境化学物質による樹状突起伸長などの形態変化や顕微測光による興奮性を解析した。具体的にはダイズポリフェノールやガドリニウム投与により,小脳プルキンエ細胞樹状突起伸展の低下が観察された。 4) in vivo 実験により発現変化した遺伝子をマイクロアレイで同定した。realtime RT-PCRで定量的変化の解析を試みたが,サンプル数が少なく,遺伝子発現の経時的変化については十分な結果は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【課題1】 マウスを用いて,行動解析,in vivo でのシナプス動態と神経伝達物質動態の長期的観察をおこなった。具体的には周産期の甲状腺機能低下,母子解離によるストレス負荷および,PFOSなど化学物質投与ののち,オペラント試験,von Frey試験,object recognitionなどの試験系により,高次脳機能を中心に機能変化を調べた。その結果,ごく軽度の甲状腺機能低下やストレスでもrighting reflexの低下や,記憶障害,情動障害,痛覚閾値の低下が生じることがわかった。 【課題2】 初代培養神経細胞(小脳および海馬)を用い,ホルモンや環境化学物質による樹状突起伸長などの形態変化や顕微測光による興奮性を解析した。具体的にはダイズポリフェノールやガドリニウム投与により,小脳プルキンエ細胞樹状突起伸展の低下が観察された。海馬についても現在解析を進めている。 【課題3】 in vivo 実験により発現変化した遺伝子をマイクロアレイで同定した。realtime RT-PCRで定量的変化の解析を試みたが,サンプル数が少なく,まだ十分な解析結果が得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
【課題1】 マウスを用いて,行動解析,in vivo でのシナプス動態と神経伝達物質動態の長期的観察をおこなう。昨年度から継続し,具体的には低用量の抗甲状腺材を用いた周産期のホルモン環境変化,母子解離によるストレス負荷および,ポリフェノールや重金属など環境化学物質投与ののち,物体認識試験,位置認識試験および視覚弁別試験を行い,高次脳機能を中心に機能変化を調べる。また,パッチクランプ法による神経細胞興奮性の変化を解析する。 【課題2】 昨年から引き続き,小脳および海馬の初代培養神経細胞を用い,ホルモンや環境化学物質による樹状突起伸長などの形態変化や顕微測光による興奮性を解析する。形態の変化は画像解析ソフトを用いて半定量的に解析する。解析後、Laser capture microdissection により標的とする細胞のRNA を別個に採取し,real time RT-PCRにより遺伝子発現を解析する。 【課題3】小脳における甲状腺ホルモンにより直接発現が調節される遺伝子(甲状腺ホルモン応答領域を有する遺伝子)をChIP on chip法により,同定する。同定できた場合,CRISPR-Cas9法により応答領域をノックアウトし,作用が消失するかどうかを解析する。ノックアウトは細胞レベルで開始し,将来の個体レベルでの解析の準備とする。
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