研究課題/領域番号 |
25281028
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
五十嵐 勝秀 星薬科大学, 付置研究所, 准教授 (30342885)
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研究分担者 |
大塚 まき 星薬科大学, 付置研究所, 助教 (40734372)
山本 直樹 星薬科大学, 付置研究所, 助教 (50757432)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゲノム / エピジェネティクス / 毒性試験 / レポーター / 有害化学物質 |
研究実績の概要 |
化学物質影響がゲノムに記憶されるエピジェネティック毒性の重要性が指摘されているが、そのリスクへの対応はほとんど進んでいない。その原因として、エピジェネティック毒性検出手法が高度な生化学解析技術を要するために毒性試験となじまず、毒性試験データからエピジェネティック毒性を検出することが容易ではないことがあげられる。本研究では、遺伝子組み換え技術を駆使し、観察が容易なマーカーによってエピジェネティック毒性の有無を検出するレポーターマウスを開発する。それにより、通常の毒性試験時に高度な技術を必要とせずにエピジェネティック毒性の有無を判定できる「個体レベル評価システムの構築」を目指す。本研究は、1)レポーターマウス作製に必要なベクターの構築、2)培養細胞を用いた最適化、3)その結果を反映させたレポーターマウス作製、4)既知のDNA脱メチル化物質アザシチジンを用いたマウスの有用性検証、の4つのステップに分けて実施する。 これまで、レポーターマウス作製に必要なベクターの構築に注力するにあたり、人工的に設計した標的配列に能動的にDNAメチル基を導入し続け、レポーター応答を抑える方針を採ってきた。しかしそれでは生体を反映しない特殊なDNAメチル化変化しか捉えられない可能性があることから、生体を反映した標的配列の選択をし直すこととした。そこで、標的配列の選択をし直し、imprint遺伝子由来のminimal promoterであるSnrpn promoterを検討したところ、近傍のメチル化状態と連動してメチル化変動しレポーター応答に反映可能である結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は、化学物質によるDNAメチル化影響を組織において可視化可能なレポーターマウスを作製することである。本システムで用いるDNAメチル化を受ける特定の標的配列としてCpG配列を複数有する完全人工配列を予定し、必要なベクター構築を進めていたが、より生体を反映させるためには標的配列を選択し直した方がよいと判断した。今年度、いくつかの候補配列を検討した結果、Snrpn promoterを用いることで、近傍のDNAメチル化状態を反映するレポーター応答を可視化可能である結果が得られた。次はこのレポーターが化学物質に応答してDNAメチル化変化を反映した応答を示すか確認出来れば、レポーターマウス作製に移ることが出来る。予備的ではあるが、培養細胞を用いた検討で、化学物質としてDNA脱メチル化物質であるアザシチジン処理により、レポーター応答が増強する結果が得られている。よって今後順調に研究が進む可能性が見込まれたため、本区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、毒性試験において汎用性高く用いられるエピジェネティック毒性レポーターマウス作製を目指している。当初、レポーターシステムの標的配列として、CpG配列を複数有する完全人工配列を念頭に研究を進めていたが、毒性試験への応用を考えた場合、出来るだけ全身の細胞において発現する配列を選ぶ必要があるとの認識を強くし、標的配列の再選択を決断した。一見回り道であるが、最終的なレポーターマウスの有用性を増すための方策であると考えている。現在、標的配列としてSnrpn promoter配列という具体的な配列も得られたので、培養細胞と化学物質を用いた検証を経て、レポーターマウス作製を一気に進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はレポーター用の標的配列として、いくつかの配列を検討し、近傍のDNAメチル化状態を反映するimprint遺伝子由来のminimal promoterであるSnrpn promoterが適している結果を得た。この結果を受け、まず、培養細胞を用い、化学物質によるDNAメチル化変化に応じたレポーター応答を示すか検証する必要がある。その結果が良好であれば、レポーターマウス作製に移る。これらの検討は次年度に実施することとしたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
培養細胞を用い、化学物質によるDNAメチル化変化に応じたレポーター応答を示すか検証する。その結果が良好であれば速やかにレポーターマウス作製に移る。次年度使用額は、これらの検討に必要な経費として用いる。
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