研究課題/領域番号 |
25281030
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 進康 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (20252702)
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研究分担者 |
谷 佳津治 大阪大谷大学, 薬学部, 教授 (50217113)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 黄砂 / バイオエアロゾル / 微生物群集構造解析 / 環境影響 / 健康影響 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、それまでの成果をふまえ、生活環境の大気中の微生物(細菌および真菌)について連続モニタリングを行い、季節変動や気象の変化もふまえて詳細に解析した。細菌および真菌の現存量は、rRNA遺伝子を標的とした定量的PCR法により測定した。細菌および真菌の群集構造解析は、amplicon sequence法により行った。 細菌については、黄砂飛来時には現存量の平均値が黄砂非飛来時の約5倍に増加したが、非飛来時における細菌現存量の変動が大きく、黄砂発生時と同等の日もあった。細菌群集構造は黄砂飛来時と非飛来時で大きな差は見られなかった。また、細菌の現存量および群集構造ともに、降雨にともなう大きな変化は見られなかった。 次に、真菌群集構造解析および多様性解析の結果、黄砂飛来時には非飛来時と比較して真菌群集の多様性が低下し、また真菌群集構造の類似性が変化するなど、真菌群集が変化しており、一定の属の真菌の割合が増加する可能性が示された。また定量的PCRの結果、黄砂飛来時にその量が約3倍に増加することが分かった。 以上より、黄砂飛来時には、生活環境の大気中の真菌群集がその影響を受ける可能性が示された。 また、バイオエアロゾルに付着している微生物の生理活性評価法に関する研究を進め、プロトコールをほぼ決定した。 さらに、中国における共同研究を現地の研究協力者とともに開始し、北京において、黄砂発生時期に黄砂の連続サンプリングを行った。現在、採取した黄砂試料について、微生物現存量の測定および群集構造の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生活環境の大気中の微生物(細菌および真菌)を対象として、2年を超える継続的なモニタリングができ、微生物の現存量や群集構造に関して、季節変動や経年変動、気象の影響もふまえた詳細な動態解析ができた。本成果は、黄砂現象が下流域の生活環境の大気中の微生物群集に与える影響を明らかにし、黄砂現象により移動する微生物が環境・生態系や健康に与える影響を考察する上で必須の情報である。 一方、上空での黄砂サンプリングについては、黄砂の飛来量が十分ではなく、解析を進めるのが困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に中国・北京において採取した黄砂試料の解析を進め、黄砂発生源により近い地域において、黄砂現象が生活環境の大気中の微生物(細菌および真菌)に与える影響を定量的PCR法およびamplicon sequence法により明らかにする。得られた結果を大阪で得た結果と比較することにより、黄砂発生源からの距離と大気中の微生物群集が受ける影響の関係について考察し、黄砂現象により移動する微生物が環境・生態系や健康に与える影響を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年の黄砂発生時期に上空でのサンプリングを試みたが、例年になく、黄砂の飛来頻度および飛来量が少なく、十分量の黄砂試料を得ることができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度にも引き続き黄砂試料のサンプリングを行い、環境微生物学的解析を進める。
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