研究課題/領域番号 |
25281031
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
堤 裕昭 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (50197737)
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研究分担者 |
門谷 茂 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 教授 (30136288)
一宮 睦雄 熊本県立大学, 環境共生学部, 講師 (30601918)
小森田 智大 熊本県立大学, 環境共生学部, 助教 (10554470)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境変動 / 海洋生態 / 海洋構造 / 環境影響評価 / 海底環境 / 有明海 / 八代海 / 貧酸素水 |
研究概要 |
次の3つの課題について研究を進めた。 1.諫早湾における海水流動の回復が有明海奥部における塩分成層の発達に及ぼす影響:諫早湾に建設された潮受け堤防の水門開放がH25年12月に予定されていたが、実現しなかった。そこで、水門が閉じた状態での諫早湾および有明海奥部における水質および海底環境の調査、底生生物群集に関する定量調査を毎月実施し、水質および海底環境、底生生態系に関する現状認識を継続した。 2.諫早湾における海水流動の回復と有明海奥部における梅雨期後の成層継続期間の関係:有明海奥部では梅雨期に強い塩分成層が形成され、この成層が梅雨明け後も長期間持続すると底層への酸素供給が制限され続ける。その間に夏季の日射で水温が上昇すると海底堆積物からの酸素消費量が増加し、底層水は貧酸素化する。潮受け堤防の水門の開放は海水流動を回復させ、有明海奥部の塩分成層を早期に解消させる効果が期待される。しかしながら、水門が開放されなかったので、梅雨期終了直後から9月に、同海域での現状の調査を継続した。また、過去の調査例との比較より、潮受け堤防の水門が開放されなくても、その影響を評価できるコンピュータシュミレーションの方法を検討した。 3.諫早湾における海水流動の回復が有明海奥部の塩分フロント形成と海底の環境および生態系に及ぼす影響 梅雨期における大量の淡水流入による塩分成層の形成時に、諫早湾および有明海奥部で、水質、海底堆積物の採取ならびに底生生物の定量調査を実施した。これらの調査結果より同域における海水構造、海底堆積物の物理化学組成、底生生物群集の豊富さと種組成に関し、それぞれの分布パターンを把握し、相互関係を明らかにした。塩分成層形成時に発生する塩分フロントの場所は、海底堆積物の分布や棲息する底生生物の種組成が大きく変化する境界とも一致し、潮流の流向・流速も関与している関係を示す調査結果が蓄積された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、以下の3つの具体的な課題についての調査、研究を進めることを計画していた。 1.諫早湾における海水流動の回復が有明海奥部海域における塩分成層の発達に及ぼす影響 2.諫早湾における海水流動の回復と有明海奥部海域における梅雨期後の成層継続期間の関係 3.諫早湾における海水流動の回復が有明海奥部海域の塩分フロントの形成と海底の環境および生態系に及ぼす影響 これらの研究課題は、H25年12月までに確定判決として諫早湾干拓地の潮受け堤防の水門が開放されることを前提として、研究計画が立案されていた。しかしながら、事業主体である国が水門の開放を期日までに実施しないという予想できなかった状態が発生し、研究計画の前提条件が大きく崩れている。そこで、本研究では、潮受け堤防の水門が開放されていない状態で実施してきた有明海奥部海域および諫早湾における水質、海底環境ならびに底生生物群集に関する調査を継続し、引き続き現状認識を続けることとした。また、これらの調査結果と過去の調査例を比較することによって、想定していた水門の開放が実現しなくても、新たなコンピュータシュミレーションの手法を開発して、水門締め切りの影響の大きさついて、新たな見解を提示する準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度において、以下の3つの具体的な課題についての調査、研究を進める。 1.諫早湾における海水流動の回復が有明海奥部海域における塩分成層の発達に及ぼす影響 2.諫早湾における海水流動の回復と有明海奥部海域における梅雨期後の成層継続期間の関係 3.諫早湾における海水流動の回復が有明海奥部海域の塩分フロントの形成と海底の環境および生態系に及ぼす影響 これらの研究課題は、H25年12月までに確定判決として諫早湾干拓地の潮受け堤防の水門が開放されることを前提として、研究計画が立案されていたが、事業主体である国が水門の開放を期日までに実施しないという予想できなかった状態が発生し、研究計画の前提条件が大きく崩れている。そこで、本研究では、潮受け堤防の水門が開放されていない状態で実施してきた有明海奥部海域および諫早湾における水質、海底環境ならびに底生生物群集に関する調査を継続し、引き続き現状に関する情報の蓄積を継続する。そこのことから、仮説として注目している諫早湾潮受け堤防の締め切りに伴う潮流の変化が、これまでほとんど影響がないと評価されてきた有明海奥部海域の海水構造や物質輸送、海底環境に対して、大きな影響を及ぼしている可能性と、そのメカニズムの解明をめざす。そのためには、新たに潮流や物質輸送に関するコンピュータシュミレーションの手法の開発をすすめる。また、そのキーとなる現象に関する追加的な堆積物調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
夏季の天候不良のために予定の海域調査を延期し、短縮したため、共同研究者の旅費の36,360円を次年度に繰り越すことになった。 今年度の共同研究者の旅費に繰り入れて使用する。
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