研究課題/領域番号 |
25281032
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
太田 壮一 摂南大学, 薬学部, 教授 (10213729)
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研究分担者 |
角谷 秀樹 摂南大学, 薬学部, 助教 (00581414)
秋山 恵麻 摂南大学, 薬学部, 助教 (50581401)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 恒常性攪乱物質 / 経世代毒性影響 / 性ホルモン定量 |
研究概要 |
平成25年度においては、まず、極少量の血液中の性ホルモンと甲状腺ホルモン及びそれら代謝物の高感度迅速型リアルタイム式分析法の構築を行った。従来では、ELISA法等による数種の性ホルモンのみの測定であったものを、本法では性ホルモン(9種)及びその代謝物(9種)の、計18種の性ホルモンの定量を確立することに成功している。 次に、マウスの血中の性ホルモンの更なる改善を目的として、①試料の減量化、②迅速化、③高感度化の、3つの観点を念頭に検討を試みたところ、C18カートリッジカラムと超小型ガラスカラムにフロリジルゲルあるいはシリカゲルを充填、連結することにより、現在、500μlの血液量で、ピコレベルの性ホルモンの定量を達成している。一方、上記③の高感度化は、本研究室現有の高分解能GC/MS (JEOL製 JMS800)を駆使して、現行の性ホルモン1ピークに対するモニターチャンネルを2チャンネル方式から4チャンネル方式に変更することにより、2倍以上の感度向上が観察されている。更に、C57/BL雌雄マウスに、TCDD、マイレックス、PCB#153、ペンタクロロベンゼンを投与した結果、TCDDやマイレックスでは17β-OH Andorosterone、Estradiol及びTeststeroneの増加が、一方、PCB153やペンタクロロベンゼンではPrognenoloneやAndorostendione等の著しい減少といった現象が観察された。すなわち、TCDDやマイレックスは、ステロイドホルモン合成代謝経路において肝薬物代謝酵素CYP17等の活性を促進的に作用させ、EstradiolやTeststeroneを増加させたのに対して、PCB153やペンタクロロベンゼンは、コレステロールを初発物質とする上記合成・代謝経路全体に抑制的に作用していることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
性ホルモンの定量系の確立は順調にいっているものの、甲状腺ホルモンの確立は若干遅れている。その理由は、当研究室現有のGC/MSが、昨年度後半にコンピュータ基盤が壊れ、その部品の発注や修理等にかなり時間が費やされてしまい、甲状腺ホルモンの検討する時間がなかったためである。しかし、現在では、その問題も解決され、今後の研究課題の進捗状況に大きな懸念はない。一方、動物実験の方は、経世代影響試験の際に、授乳期の雌マウスが気が荒れて、しばしば仔マウスを食べてしまうトラブル(被検物質によって現象が異なるが?)が観察されたので、その対策を賦しつつ、研究遂行を行っていく予定である。その他については問題なく進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、上記した研究実績の概要に記載した通り、動物実験の結果、興味深い現象が観察された環境汚染物質の再現性の確認、並びに、新たに数種類の臭素系難燃剤を被検物質として、動物実験に供する予定にしている。ただし、上記の達成度の項において、授乳期の雌マウス対策として、大きなゲージに変更したり、ケージの清掃頻度を少なくする等の改善を試みながら、実験を遂行する。また、本年度は、甲状腺ホルモンの定量システムを完成させ、前年度の動物実験でサンプリングし、冷凍保存してある試料を、早急に定量を行う。更に、平成27年度に計画している検討の予試験として、保存している臍帯の一部を用いて、それに蓄積している環境汚染物質の定量を試みる予定である。
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