研究課題/領域番号 |
25281034
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
稲葉 一穂 独立行政法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 室長 (60176401)
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研究分担者 |
村田 智吉 独立行政法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (50332242)
山村 茂樹 独立行政法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (90414391)
永野 匡昭 国立水俣病総合研究センター, 基礎研究部, 主任研究員 (10393464)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 土壌汚染 / 廃棄家電製品 / レアメタル / 溶出量測定 / 含有量測定 |
研究概要 |
廃家電製品から溶出する金属元素をスクリーニングする目的で、廃PCから取り出した電子基板、ブラウン管ガラス、液晶パネルを粉砕したものを試料として、含有量の全量分析を行った。凍結粉砕機および擂潰機で粉砕した試料を王水溶解し、残渣は炭化・灰化の後に四ホウ酸ナトリウム-硼砂で溶融した。溶解した試料中の金属元素はICP-AESおよびICP-MSで、臭素は粉砕試料を燃焼-イオンクロマトグラフィーで定量した。電子基板に含まれる主要元素はCu、Si、Br、Ca、Al、Sn、Pb、Sbであり、ブラウン管ガラスではSi、Pb、Ba、Srが、液晶パネルではSi、Ca、Ba、Srと消泡材として含まれるAsまたはSbが主たる元素であった。 水への溶出試験は、テフロンインペラを用いた高速撹拌法で行った。固液比は質量比で1:10とした。屋外での降雨暴露による溶出試験は、試料を降雨採取器のフィルターに乗せ、裸地、スギ林、シラカシ林、アカマツ林で1年間降雨暴露した。溶出量の大きさは、含有量の大きさとは幾らか異なる傾向を示した。室内での純水による溶出試験では、電子基板からはAl、Ca、Ni、Cu、Zn、Ba、Pbが、ブラウン管ガラスからはB、Si、Zn、Ba、Pbが、液晶パネルからは消泡剤成分のAsまたはSbとB、Al、Ni、Zn、Sr、In、Ba、Pbが高い濃度で溶出した。実際の降雨に曝露させる溶出試験では、電子基板からはPb、Cu、Zn、Sn、Ni、Sb、Li、Co、Inが、ブラウン管ガラスからはPbが、液晶パネルからはBとInが高い濃度で溶出した。いずれの溶出試験においても、溶液のpHが低いほど溶出量が増加する傾向があった。純水での溶出試験と降雨曝露溶出試験の結果に差があるのは、撹拌の有無による基板本体の分解の進行度の違いと、それによって生成される懸濁物への吸着の大小が影響している可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
廃家電製品からの溶出量測定については、含有量の詳細を明らかにすることができたこと、撹拌による溶出試験の結果が降雨暴露による実際の溶出量を反映していない可能性があることなど、新たな知見を得ることができた。さらに、液晶パネルについて、レーザーアブレーションによる深さ方向の分析も行っており、順調に進行している。 長期暴露による微生物叢の変化測定については、汚染土壌試料の作成が終了し、遺伝子レベルでの解析を行っている。 以上より、25年度の当初目的はほぼ満足していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従い、降雨暴露試験地土壌や水銀汚染土壌などを用いた微生物影響試験を推進する。特に、新たな土壌浄化工法の開発につながる可能性のある耐性菌の有無について、詳細な検討を行っていく予定である。 溶出試験については、当初の予定通り、塩分添加系での溶出試験など、津波被災地での土壌汚染への対応につながる検討を行うと共に、液晶パネルの深さ方向の含有量差に対応した試験の実施も検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者の所属する国立水俣病総合研究センターにおいて、水銀汚染土壌を用いた微生物影響の予備実験を行う予定であったが、25年度は国立環境研究所において予備実験を開始したため、国立水俣病総合研究センターにおける測定装置の準備と測定試料の輸送をしないで済んだこと、打ち合わせ出張の回数を削減できたことから、使用金額が減少したものである。 26年度からは本格的な測定を開始する予定であり、国立水俣病総合研究センターにおいても新たに測定装置の準備などを行う必要がある。これらの消耗品購入などを考え、26年度は当初予定額に増額して配分している。
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