研究課題/領域番号 |
25281035
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松藤 敏彦 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00165838)
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研究分担者 |
東條 安匡 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70250470)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 廃棄物処分場 / 準好気性構造 / 適正管理 / 早期安定化 |
研究実績の概要 |
日本全国の埋立面積1ヘクタール以上の準好気性埋立地を対象とし、埋立地構造および管理状況に関するアンケート調査を行った。回答のあった238施設のうち,集排水管とガス抜き管を接続していない施設は12%を占め,集排水管末端水没が40%、ガス抜き管出口の閉鎖が30%あった。またガス抜き管からのガス排出については,発生なし30%,不明20%,ガス濃度の測定なしが90%であった。これはガス測定が,埋立中の施設には義務付けられていないためであるが,準好気性構造における空気供給の重要さが理解されていないことが明らかとなった。 ガス抜き管設置本数が多く,日常的に埋立ガスの排出が認められ,さらに定期的なガス流量測定が行われていることから良好な準好気埋立構造が保たれていると考えられた産業廃棄物埋立地を対象とし,現地調査を行った。全てのガス抜き管において,ガス流れの方向,ガス流速,温度を測定したところ,集排水末端以外に,一部の管から空気が流入していることがわかった。また各ガス抜き管において,ガス流量と温度の間には良い相関がみられ,埋立地内部の温度と気温の差により生じた浮力を駆動力として,集排水管から空気を吸引するモデルがよく適合した。以上のことから,集排水管から供給された空気は,埋立地内を通過してガス抜き管に集められると推定された。この仮定を定量的に証明するため,埋立ガス中には存在しない一酸化炭素を空気流入管から注入し,ガス流出管でガス濃度の連続測定を行うトレーサー試験を行った。その結果,集排水管から埋立地内を通過してガス抜き管に流入する流れ以外に,埋立地内の他の箇所からガス抜き管に向かって流入する流れがあることがわかり,ガス抜き管が大きなエアレーション効果を持つことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目までの研究の主な成果は,以下のとおりである。 準好気性埋立地における埋立地内部の空気・ガス流れのメカニズムが,第一の目的であった。COガスを利用したトレーサー応答試験により,集排水管から流入した空気が埋立地内を通過してガス抜き管から排出されること,ガス抜き管出口におけるガス流速,温度の測定より,浮力が流れの駆動力となっていること明らかにした。これは,世界で初めての知見であり,準好気性構造の理論的根拠を与えた。 また,ガス抜き管出口の温度と流速によって準好気性の機能が発揮されているかどうかを知ることができるため,全国の一般廃棄物処分場を対象として調査を行った。その結果,機能を発揮できている処分場は1割にとどまることが分かった。従来は集排水管出口の水没による機能障害が4割程度あると認識されていたが,それ以上に状況が悪いことが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
埋立地は、廃棄物の法的分類に基づいて一般廃棄物処分場と産業廃棄物処分場に分かれている。2年目の調査は一般廃棄物処分場に対して行ったが、全国の状況を把握するため、最終年度は産業廃棄物処分場を対象に調査を行う。この調査の実施においては、廃棄物資源循環学会の産廃研究部会,埋立部会の協力を得る(申請者が両部会の部会長である)。また、全国産業廃棄物連合会の処分場部会にも協力を求める。調査方法は、①アンケート調査,②測定データ入手,③測定依頼,④現地調査(必要に応じて)である。 また,準好気性埋立地におけるエアレーションが、どの程度の範囲に及ぶか、長期的には有機物分解をどれだけ促進するかを明らかとするためシミュレーションモデルを作成する。このモデルにより明らかとすることは、①空気流れ(浮力による集排水管からの吸引,廃棄物層通過,排出)、②エアレーションと好気性分解(有機物量の仮定必要),その範囲、③有機物の安定化進行である。これによって、準好気性埋立の設計方法を提案する。与える条件は埋立廃棄物種類,空隙率であり,集排水管,ガス抜き管の管径,配置を設計変数とする。また埋立層の厚さ,埋立順序(面的に広げるかどうか),覆土の厚さなど,埋立作業方法もいくつかの選択がありうる。数値シミュレーションによって,さまざまな条件における好気領域の拡大,有機物の分解の経時的変化を予測し,支配的要因を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
自治体対象の調査を行ったが,準好気性の機能が健全である埋立地が,予想以上に少ないことがわかった。そのため,現地での調査を実施する対象が見つからなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は,産業廃棄物処分場を対象として調査を行う。一年目の研究では現地調査を行ったのは産業廃棄物処分場であり,良好な機能を発揮している処分場が多く見つかると思われる。調査回数が増えるため,調査費用,旅費等に使用する。
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