平成27年度は、1) 有機ナノ粒子作製技術の確立、3)ナノ薄膜への浸透と反応性制御、4)妨害除去技術の確立、5)ppbレベルのイオン種の化学状態分析を行った。 1)については、昨年度に引き続き、本課題研究中に発案したゼラチン分解物水溶液中での合成法の詳細な検討を行い、粒径分布が狭く、粒径制御され、かつ分散の時間安定性に優れた、マイルドな条件での作製方法であることを見出した。水中では粒子成長と2次凝集により、粒径が時間と共に大きく変化し容易に沈殿を生じるが、ゼラチン分解物を添加することで、2つの構造の異なる色素に対しても180時間まで粒径が変化せず安定に分散しさせることに成功し、粒径制御および分散安定性に優れた媒体であると認めた。3)は浸透性の制御から、新たに固体サンプル向けの試験紙として、ニッケル合金に対する接触試験紙を発案した。金属をイオン化するための層を試験紙表面に用いたことが鍵であり、金属アレルギーの人が身の回りのアクセサリーや日用品を調べるための方法として提案したい。4)については、周期律表上で同族で分離が難しい、ヒ素用試験紙におけるリン酸との分離に関する研究を行い、カルシウムイオンとの沈殿や炭酸カルシウム粉への吸着分離等を試みたが、自然界で20~100倍以上の高い濃度で存在するリン酸の完全除去には至らなかった。5)では、鉄(2価/3価)の状態別オンサイト分析用の試験紙を目標として、2価鉄に関して地下水用の浸漬時間10秒の検量線(25ppb~10ppm)および河川用10分の検量線(2.2 ppb~500ppb)の2つを作成し、地下水の分析を試みた。溶存酸素0の汲み上げ直後の地下水から、大気からの酸素が経時的に溶解することによる鉄(II)濃度の減少を、10秒検量線を用いて分析時間30秒以内で捉えることに成功し、変化しやすい鉄イオンに対し現場分析の可能性を示唆している。
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