研究課題/領域番号 |
25281040
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
川上 浩良 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (10221897)
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研究分担者 |
田中 学 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (00531831)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノスペース / CO2分離膜 / CCS / 表面修飾ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
地球温暖化防止、持続的な経済成長を両立させる観点から、即効性が高く我が国をはじめ先進諸国で積極的に研究が進められている二酸化炭素(CO2)回収・貯蔵(CCS:Carbon Dioxide Capture and Storage)へ応用可能な、次世代型CO2分離膜を創出する。CCSの実現には、これまで検討されてきた分離膜による1段階分離法ではなく、シニュレーション等を用いた理論解析から2段階分離法が最適であると考え、その目的を達成するために、特にCO2透過性を飛躍的に向上させる革新的CO2分離膜を創製する。具体的には、(1) 超高CO2拡散性、高CO2溶解性を示すナノスペースを有する新規表面精密制御ナノ粒子の合成、(2) ナノ粒子含有複合膜の超薄膜化 という全く新しいCO2透過概念を提案することにより、従来膜性能を凌駕するCO2分離膜の創出を目指す。 本年度は、特に超薄膜の作製法に注力し研究を進めた。特に、乾湿式層転換法を用いて超薄膜が作製できるかを検討した。この製膜法は、高分子のスピノーダル分解を利用して非対称膜を作製する方法で、最終的にはナノ粒子を含有した超薄膜スキン層を有する複合膜を作製することを目的としている。本製膜法を用い、申請者らは既に5nmまで完全無欠陥で分離活性を有するスキン層の合成に成功しているが、ナノ粒子を含有した高分子溶液からの超薄膜は作製できなかった。特に膜厚が薄くなるにつれナノ粒子の凝集形態が表面スキン層に影響を与え、defectが形成され易いことが明らかとなった。この問題の解決が重要であり、次年度はナノ粒子の凝集状態の抑制を試みながら再度超薄膜の検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成する上で特に重要となるのは、表面修飾ナノ粒子の合成、その粒子を含有する基盤高分子、さらに実用化を勘案した上での膜の超薄膜化である。 ナノ粒子は10nm以下の直径となるようゾル-ゲル法から合成することにより、ナノ粒子表面へ樹状分子(デンドリマー、ハイパーブランチポリマーなど)を合成することに成功した。また、ナノ粒子を含有する基盤高分子の合成も、(CO2/N2)選択性 > 20を有する新規高分子(シロキサン系高分子、芳香族ポリイミドなど)の合成に成功した。しかし、ナノ粒子を含有して超薄膜を作製することには至っておらず、今年度に続き来年度もその製膜に関して検討を続ける。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの達成度に記載したように、表面修飾ナノ粒子の合成と基盤高分子の合成に関しては既にある程度の目処が立ったが、ナノ粒子を含有して超薄膜を作製する製膜法に確立には至っていない。ナノ粒子を含んだ高分子溶液から乾湿式相転換法により、ナノ粒子含有超薄膜スキン層を有する非対称構造複合膜を作製するつもりである。さらに、できれば相分離を利用して表面スキン層内ナノ粒子のクラスターを形成する。高分子溶液の相分離を誘発する高分子の高沸点良溶媒、低沸点良溶媒や貧溶媒の選定が重要となるが、迅速な相分離を起こす貧溶媒のアルコールの選択も特に重要となるため、これら溶媒条件の検討も進め、研究目標の達成を目指した研究を行う。
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