研究課題/領域番号 |
25281042
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
杉浦 則夫 筑波大学, 国際室, 特命教授 (10302374)
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研究分担者 |
間世田 英明 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (10372343)
清水 和哉 東洋大学, 生命科学部, 講師 (10581613)
内海 真生 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60323250)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生物機能利用 / 生態工学 / 環境分析 / 水資源・水システム / 安全・安心 |
研究実績の概要 |
本研究は、極低濃度でも人間の嗅覚で感知されるかび臭が水域で発生していることで国や地方自治体に膨大な除去費用(数億円/年)を計上させたり、臭い吸着による水産物の経済的損失を与えている問題を重視し、水源池や湖沼で安価にできるかび臭発生抑制法を構築することを目的に実施するものである。具体的には、(1) かび臭物質産生放線菌とラン藻類の動態とかび臭発生との関係解明、(2) 放線菌のかび臭物質産生制御機構の解明、(3) (1)と(2)の知見を基礎に水源池でのかび臭発生予測手法の構築、を行うものである。 H26年度は(1)に関して霞ヶ浦を水源とする浄水場でのサンプリングを実施し、昨年度と同様近年の霞ヶ浦でのかび臭物質産生原因生物の特定、およびかび臭物質産生生物と各種環境因子との関係解析を継続し、H25年度と同様、2月から4月にかけてかび臭(主にジェオスミンと2MIB)が発生しており、原因生物としてラン藻類が考えられることを明らかとした。(2)に関して、昨年度に引き続き湖底に普遍的に生息するかび臭物質産生生物である放線菌のかび臭物質産生に関与する環境因子を検討するため、本年度は、光環境条件、および溶存酸素濃度条件の2つの環境因子とかび臭物質産生量との関係について、指標放線菌を用いて検討した。その結果、光照射条件に関しては、短波長(青)を含む光照射により放線菌のかび臭産生量が増加すること、光強度に放線菌のかび臭産生に対する閾値が存在している可能性があることが判明した。また、溶存酸素濃度条件に関しては、飽和濃度条件下でのモデル放線菌の増殖および培地中のかび臭物質濃度変化から、放線菌が対数増殖期にかび臭物質を産生すること、極めて低い溶存酸素濃度および嫌気環境下では増殖およびかび臭産生が行なわれないこと、中程度の濃度(2~4 mg O2/L)では1細胞当りのかび臭物質産生量が増加することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究申請の目的は、申請者らがこれまで継続的にグループで研究を実施している水源池でのかび臭物質産生生物の動態解析、かび臭物質産生と各種環境因子との関係解析、等の研究を発展させ、(1) かび臭物質産生放線菌とラン藻類の動態とかび臭発生との関係解明、(2) 放線菌のかび臭物質産生制御機構の解明、(3) (1)と(2)の知見を基礎に水源池でのかび臭発生予測手法の構築、を行うものである。H26年度はH25年度に引き続き(1)および(2)の展開に資する研究を精力的に進め、研究対象である霞ヶ浦でのかび臭物質産生生物とかび臭濃度の変動に関する知見、かび臭物質産生生物である放線菌の光条件や溶存酸素濃度条件とかび臭物質産生との関係に関する新しい知見を得ることが出来た。これらの知見の集積が申請者らか最終目標とする(3)にあるかび臭発生抑制手法構築に資することは間違いなく、研究目的に掲げた内容に関して順調にその成果を蓄積できた、と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度に当たるH27年度は特に(2)の放線菌のかび臭物質産生制御機構を解明していくことに注力し、(3)の水源池でのかび臭発生予測手法の構築を目指す。具体的には、H26年度の溶存酸素濃度と放線菌のかび臭産生との関係解析をさらに進める他、有機物の種類や濃度との関係解析にも着手する。また、これまでの研究で得られた知見を集積し(3)のかび臭発生抑制手法を提言する。
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