研究課題/領域番号 |
25281048
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
中村 嘉利 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (20172455)
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研究分担者 |
高木 均 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (20171423)
宇都 義浩 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (20304553)
佐々木 千鶴 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 講師 (50452652)
浅田 元子 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (10580954)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオマス |
研究実績の概要 |
国産バイオ燃料やバイオマテリアルの大幅な生産拡大を図るため、稲わら、バガス(砂糖黍の絞り粕)等の農作物の未利用部分や針葉樹、広葉樹間伐材等のリグノセルロース系バイオマスを低コストで効率的にエタノールや有用化学製品に変換する技術の開発が急務となっている。本年度は、主として針葉樹および広葉樹リグニンからの機能性樹脂の製造について検討した。水蒸気爆砕と水・メタノールを用いた抽出分離操作によって得られる低分子量リグニン(重量平均分子量はスギの場合1330、ユーカリの場合1400)は比較的均一性に富み、数個のフェノール性水酸基を含有していることがわかったので、低分子量リグニンを原料としたエポキシ樹脂の合成と物性評価について研究した。相間移動触媒TMAC (テトラメチルアンモニウムクロライド)を用いてエピクロロヒドリンと反応させる新規方法により、リグニンエポキシ樹脂の分子量を制御(低分子量化)し、有機溶媒に可溶、すなわち、有機エレクトロニクス材料として成形可能なエポキシ樹脂を得るための樹脂化方法を確立した。次に、エポキシ樹脂を硬化剤(市販のフェノールノボラックや低分子量リグニン)により硬化させ、リグニンエポキシ樹脂硬化物の熱機械特性を測定し、電気機器の基板材料等に使用可能なレベルの特性(ハンダ耐熱性を超える熱分解温度や材料強度)を持つリグニン分子量を決定した。スギリグニン由来エポキシ樹脂の耐熱性はユーカリ由来エポキシ樹脂よりも高かった理由はスギリグニンは縮合型リグニンを多く含むことによると考えられる。また、水蒸気爆砕セルロースからのエタノール生産の効率化のために阻害物質分解菌を用いた同時糖化発酵における流加培養の有効性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・バイオベースエポキシ樹脂(リグニン含有率90%)の合成に成功し、熱機械特性が実用化レベル(電気機器の基板材料等に使用可能なレベル)であることを明らかにした。また、針葉樹リグニンと広葉樹リグニンを原料としたエポキシ樹脂の諸特性を比較検討することができた。 ・フルフラールや5-HMFなどの阻害物の影響を削減するための新規同時糖化発酵法を提案し、水蒸気爆砕物のアルコール発酵のために有効であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
水蒸気爆砕セルロースのアルコール発酵の効率化だけでなく、有用製品化(ナノファイバー化)を試みる。水蒸気爆砕物の水・メタノール抽出後の固形残渣物中にはセルロース以外に一部リグニンが混在しているので、アセトン等の溶媒で含有リグニンの除去を行う。分離・精製されたセルロースに対してグラインダー処理を施して開繊処理を行い、針葉樹および広葉樹由来のセルロースナノファイバーを作成する。この際、水蒸気爆砕条件(温度、圧力や蒸煮時間)およびグラインダー処理条件(試料濃度、回転数や処理回数)により得られるセルロースナノファイバーの形態(直径,長さ)が変化するため、種々の条件でセルロースナノファイバーの試作を行い、現有のSEM(走査型電子顕微鏡)とTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて制御可能な形態の範囲を把握する。得られた水蒸気爆砕セルロースナノファイバーを種々の樹脂に添加して複合材料を作成し、その熱・機械特性を測定することにより、水蒸気爆砕セルロースナノファイバー増加効果を明らかにする。
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