法規制対応の有害化学物質に加え、それらの環境中分解物にも着目して、環境中挙動を踏まえた親・子化合物の包括的な環境ばく露解析を実施した。 「実環境中濃度のモニタリング事例の蓄積」として、平成26年度に引き続き、河川水のサンプリング収集を行い、実モニタリングデータの蓄積を図るとともに、親・子化合物の検出の有無や検出パターン等の解析を行った。その結果、GC/MSおよびLC/MS/MSで一斉分析可能となった親60種の分解生成物106種のうち検出した分解生成物は70種、検出した親物質は50種であり、今まで水環境中存在状況が不明であった分解生成物が親物質よりも多数環境中に存在し、分解生成物が親物質よりも高濃度で存在している地点も多数存在した。分解生成物の中には平均検出濃度がEU指令の環境汚染物質濃度0.1 mg/Lを超過して検出される物質も多数見つかった。さらに、河川の上流から下流への流達も考慮して、急速分解性を有する親化合物とその子化合物が両方同時に検出されるケースや一方のみ検出されるケースについて実データを検証した。 また、「親・子化合物の包括的な環境リスク評価の試み」として、モニタリング結果に基づいて、親・子化合物の水生生物に対する環境リスクの比較を試みた。検出された分解生成物の水生生物毒性は総じて親化合物よりも低いことがわかった。一方、分解前後で水生生物毒性が上昇した親・子化合物は、スチレン(1-240)→ベンズアルデヒド、ベンジル=クロリド(1-398)→ベンジルアルコール、キノリン(1-81)→2-キノリノンであり、これらは親物質よりも高濃度で検出される地点も多い物質であったが、いずれも毒性情報として急性毒性値やEPIsuiteを用いて予測した不確かなものであるため、これらについても直ちにリスクが高いとは言い難いものであった。
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