研究課題/領域番号 |
25281050
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
国末 達也 鳥取大学, 農学部, 教授 (90380287)
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研究分担者 |
岡本 芳晴 鳥取大学, 農学部, 教授 (50194410)
寳來 佐和子 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (60512689)
鈴木 剛 独立行政法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 研究員 (70414373)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 残留性有機汚染物質 / コンパニオンアニマル / ハウスダスト / バイオアッセイ / リスク評価 / レアメタル |
研究概要 |
本研究の目的は、家庭用品に使用されている化学物質の室内残留性を明らかにし、室内で家族同様に育てられているイヌ・ネコ(コンパニオンアニマル)を指標動物として、乳幼児に対するリスクを評価することにある。平成25年度は、コンパニオンアニマルの血液および実際に与えているペットフード、そして飼育されている室内のダストを収集し、生活関連物質(Personal Care Products: PCPs)とレアメタルの実態解明を試みた。対象試料におけるレアメタルの分析は既報に従ったが、PCPsについては前処理法を開発することで、より高精度の分析を可能とした。室内ダストの分析から、電気電子機器由来と考えられるAg、In、Sn、Biの検出が明らかとなった。また、PCPsであるメチルパラベン(MeP)、エチルパラベン(EtP)、プロピルパラベン(PrP)、ブチルパラベン(BuP)、トリクロサン(TCS)、トリクロカルバン(TCC)も検出され、パーソナルケア製品の使用にともない室内環境が汚染されていることが示唆された。室内ダストから検出されたPCPs濃度と推定一日ダスト摂取量を基に、ダストを介したPCPs曝露量を年齢ごとに見積もったところ、1歳前後の乳幼児は成人と比べ約20倍高値を示した。コンパニオンアニマルの血清からはMeP、EtP、そしてPrPが検出され、とくにPrPが高濃度であり、PrPがペットフードから検出されなかったことから,ダスト由来の暴露を反映していることが判明した。しかしながら、室内ダストで高濃度を示したMePはコンパニオンアニマルの血清で低値を示し、MePとPrPの生物蓄積性や代謝・排泄速度,および血中タンパクとの結合能の違いが関与していると考えられた。PrPはパラベン類の中でエストロゲン活性が高いことが報告されており、乳幼児に対する血中残留レベルや健康リスクが懸念された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、コンパニオンアニマルの血液-実際に与えているペットフード-飼育されている室内ダストといった貴重なサンプルセットを収集したことに加え、これまで前処理法が確立されていなかった生活関連物質(Personal Care Products: PCPs)についてメソッドを開発し、高精度の分析法が確立できた。化学分析の結果、これまで室内残留性が明らかになっていなかったパラベンやトリクロサンなどのPCPsがダストに吸着・残留していることに加え、レアメタルの検出も明らかとなった。ペットフードと血液の分析をおこないダストのデータと比較解析したところ、コンパニオンアニマルがダストを介してPCPsに暴露しており、プロピルパラベン(PrP)など一部のPCPsが特異的に残留する可能性を提示することができた。また、血液試料に対応できるin vitroレポーター遺伝子(CALUX)アッセイ法の構築についても順調に予備試験が進んでいる。サンプルセットの取集がやや滞っているものの、その他のテーマについては計画通りに進行しており、全体としては順調である。
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今後の研究の推進方策 |
試料採取とコンパニオンアニマルの診断、そして化学分析を継続するが、昨年度ターゲットにした生活関連物質やレアメタルに加え、主に家庭用電気機器類や家具類に使用されている有機ハロゲンおよび有機リン系難燃剤の分析・解析もすすめる。とくに、コンパニオンアニマルの血液-実際に与えているペットフード-飼育されている室内ダストのサンプルセットの分析を進め、ダストを介して暴露している化学物質を明らかにする。また、コンパニオンアニマルで観察された疾病との関連性を評価する上で必須な血液の化学分析データ数を増やし解析をおこなう。疾病との関連性については、対象とした親化合物だけでなく、甲状腺機能に影響を及ぼすことが強く疑われているPCBsなどの生体内代謝物(OH-PCBs)についても、研究代表者が報告している分析法を用いて評価する。さらにレアメタルに加えAs、Hg、Pb、Cdなどの毒性元素のデータも含め解析する予定である。 アリル炭化水素受容体(AhR)、エストロゲン受容体(ER)、アンドロゲン受容体(AR)、甲状腺ホルモン受容体(TR)、グルココルチコイド受容体(GR)、プロゲステロン受容体(PR)、そしてペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体(PPARγ2)のアゴニストおよびアンタゴニスト活性が検出できる各種核内受容体を組み込んだin vitroレポーター遺伝子(CALUX)アッセイを用いて、コンパニオンアニマルの血中で検出頻度が高く、これまで調査がほとんど実施されていないPOPs関連物質を除く化学物質の内分泌撹乱作用を評価する。さらに血液(およびダスト)の抽出物を分析化学的手法で疎水性から親水性にかけ数段階分画し、バイオアッセイに適応することで各フラクションの活性プロファイルを明らかにする。とくに疎水性(POPs)フラクション以外で活性が強く示される極性フラクションを選定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、サンプル収集と前処理法の開発に比較的時間と労力を割く必要が生じたため、化学分析に関わる物品費を当初想定していた額より抑えることができ、助成金の一部を次年度以降使用分として繰り越した。今後は、サンプル収集と新たな対象物質の分析法改良に加え、数多くの試料に対して多種類の化学物質を分析する計画であることから、主にガラス器具や有機溶媒・試薬など化学分析に関わる物品が必要となる。また、バイオアッセイ用のプラスチック器具類の購入に加え、測定機器の消耗品部品における定期的な交換も必須となる。 化学分析に必要なガラス器具、有機溶媒、試薬、バイオアッセイ用のプラスチック器具、そして測定機器のLC-MS/MSやHRGC-HRMSの安定稼働に不可欠な消耗品部品や分析部の定期的な調整費に本研究費を活用する。また、研究成果を国内外の学会やシンポジウムで発表するための旅費や国際学術誌に論文として投稿する際の印刷費等にも使用する計画である。研究の進捗が比較的順調なため、新規性の高い成果を国内外の学会や学術誌で発表することが期待できる。
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