研究課題/領域番号 |
25281052
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
西廣 淳 東邦大学, 理学部, 准教授 (60334330)
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研究分担者 |
鏡味 麻衣子 東邦大学, 理学部, 准教授 (20449250)
吉田 丈人 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (40447321)
瀧本 岳 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (90453852)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒシ / オニビシ / 水質 / 動物群集 / 湖沼管理 / 三方湖 / 印旛沼 |
研究実績の概要 |
三方湖においては、2009-2014年に撮影された空中写真データを活用し、GISを用いた解析により、ヒシ群落の占有範囲の変動と環境要因の関係を分析した。 各年のヒシ分布図を比較したところ、2010年は占有面積率が67%と最も高く、湖の北西部と南東部を除くほぼ全ての場所がヒシで覆われていた。2013年は占有面積率が32%と最も低く、湖の西側に分布していたヒシが顕著に消失していた。三方湖の中央の一部や北側の湾部は6年間継続してヒシが分布していた。しかし、南東部や北西部でのヒシの分布は極めて稀だった。これは、湖への河川流入による物理的な攪乱や流入する汽水によるヒシの生育の生理的な抑制の影響であることが考察された。汽水の流入の影響を検討するため、各年の潮位(舞鶴)と流入河川(はす川)の水位との差を汽水流入量の指標として算出したところ、2013年の4-6月にかけて値が有意に大きく、汽水流入量の増加がヒシの分布範囲の縮小の要因となったことが示唆された。
印旛沼ではオニビシが繁茂する地点としない地点の水質の比較結果を整理した。夏期のオニビシ帯は開放水面に比べ溶存酸素濃度および濁度が有意に低かった。濁度はオニビシが繁茂している時期にオニビシ帯の表層と底層両方で低くなった。オニビシ帯では浮葉が水面を覆うことにより、水の流動は減少し、遮光により水中での光合成量は低下するため、溶存酸素濃度や濁度が低くなったことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三方湖の調査は予定通り進捗しており、その成果の一部は福井県が事務局となって進めている協議会に還元し、ヒシ管理マニュアルの策定などに反映されている。印旛沼においても成果が順調に論文として出版されている。達古武沼については環境省から報告書をお借りし、最終年度におけるメタ解析と取りまとめの準備を整えることができた。 このように、当初の予定通り研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる平成28年度は、各湖沼におけるこれまでの研究成果をとりまとめて論文を公表するとともに、湖沼間比較を行い、浮葉植物の繁茂の機構とその湖沼生態系への影響、および生態系管理の基本的な考え方についてとりまとめを行う。さらに、沈水植物と浮葉植物が共存し、かつ漁業などによる利用も盛んに行われている湖沼において(青森県小川原湖を予定)、水生植物分布・水質・底質・利用についての調査を行い、生態系管理に関するとりまとめに反映させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの成果を踏まえ、湖沼における浮葉植物管理の指針案を作成することができたため、これを実効性のあるものとするため、平成28年度には地域(福井県など)に複数回赴いて地域の住民や行政と調整を行う必要が生じた。また、水生植物の長期的な動態を予測するため、植物種子の生存率実験を行っていたが、当初の予測よりも種子の寿命が長かったため、実験期間を延長することとした。 これらのため、平成28年度に旅費と物品費を使用する必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
福井県等への出張旅費として合計約30万円、物品費として合計約50万円を使用する。
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