研究課題
三方湖で撮影された空中写真の結果、2010年は湖の北西部と南東部を除いたすべての湖面にヒシが分布していたが、2016年は15%と湖の西側から湖心部にかけてヒシが顕著に消失した。汽水流入によるヒシ分布への影響を検討するため、各年の日本海潮位と流入河川水位との差を比較したところ、春に潮位が高いことで河川水位との差が縮まった年ほど占有面積率は低かった。2015年秋に湖内で採取した種子を2016年にメッシュバッグに入れて湖底に設置し、展葉開始期に当たる6月に回収して発芽、休眠、死亡種子の割合を調べた。その結果、下流側の汽水湖に近い場所ほど、初期段階での死亡率が高い傾向が示された。以上の結果により、三方湖での夏のヒシ分布の決定要因として水中の塩分濃度が有力であり、日本海潮位と流入河川水位のバランスで塩分濃度が決まると考えられた。全国の湖沼を対象とした情報収集の結果、前年度まで調査してきた三方湖および印旛沼だけでなく、シラルトロ湖、達古武沼(北海道)、諏訪湖(長野県)などでも生じていることが明らかになった。達古武沼では環境省によりヒシの実験的管理が行われており、その結果として、絶滅危惧植物の回復・保全に寄与する成果が得られている。三方湖・印旛沼ではヒシの管理により動物へのハビタット提供などの機能面での向上はみられているものの、植物の多様性への効果は認められていない。ヒシ管理が生物多様性・生態系機能におよぼす効果は、他の植物種の残存の程度など状況・経緯依存であることが示唆された。野外調査および文献調査を総合し、ヒシが増加しやすい条件として、富栄養化に加え、水位の安定化と底質のヘドロ化(細粒化と有機物の蓄積)の重要性が示唆された。水位の安定化は底質のヘドロ化の進行を促進すると考えられ、ヒシの過剰繁茂を抑制するためにはこれらの要因の総合的な管理が重要であることが示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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