研究課題/領域番号 |
25281053
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
金子 信博 横浜国立大学, 環境情報研究院, 教授 (30183271)
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研究分担者 |
中森 泰三 横浜国立大学, 環境情報研究院, 講師 (50443081)
日浦 勉 北海道大学, 学内共同利用施設等, 教授 (70250496)
島野 智之 宮城教育大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (70355337)
岡田 浩明 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物生態機能研究領域, 研究員 (30355333)
小松崎 将一 茨城大学, 農学部, 教授 (10205510)
兵藤 不二夫 岡山大学, 新技術研究センター異分野融合先端研究コア, 准教授 (70435535)
唐澤 重考 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (30448592)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 土壌食物網 / 持続可能な生産 / 生態系改変者 / 不耕起 / 草生栽培 |
研究概要 |
本研究では、土壌食物網を構成するすべての生物を調べ、正確な食物網を記載するとともに、高い生態系機能を発揮する食物網の構造を明らかにすることを目的とした。 土壌食物網の解析のために、不耕起・草生と耕起、および施肥の有無の2要因の組み合わせで設定された圃場の土壌微生物、大型土壌動物、地表徘徊性動物のバイオマスを調べた。さらに、それぞれの圃場に成立したコムギと雑草の地上、地下のバイオマスを推定した。不耕起・草生はコムギの成長を大きく低下させたが、そこに施肥をすることにより、耕起して施肥をした処理よりもコムギの成長が良くなった。食物網構造は、不耕起・草生では微生物、動物ともバイオマスが増加していた。興味深いことに、直接の影響はないと考えられた施肥によって、動物のバイオマスが増加していた。不耕起・草生処理では、根のバイオマスとリター堆積量が多く、このことが腐食連鎖に属する微生物、動物のバイオマスを増加させていた。一方、根食者は根量よりも根食者を摂食する捕食者によって制御されていた。 これらのことから、耕起および、雑草の根の除去は高いバイオマスを実現できる土壌環境で、そのポテンシャルを大きく損なっていた。不耕起・草生は一見土壌構造の劣化、植物による肥料の有効な利用を阻害するように思えるが、根やミミズのような生態系改変生物の高いバイオマスが、土壌構造を維持するとともに効率の良い栄養塩縦貫を達成していると推定できた。 また、不耕起・草生開始後の年数が異なる農地で、土壌炭素と耐水性団粒の解析を行い、耐水性団粒の炭素濃度が高く、団粒の集積が急速に起こることで、不耕起・草生圃場ではきわめて速い速度で土壌炭素隔離が生じることが明らかと成った。 一方、広域の多様性情報の整理として、陸棲等脚類の解析を実施し、モニタリングサイト1000の森林コアサイトで、微生物群集を記載するためのサンプル採取を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土壌食物網解析の第一段階として、食物網を構成する微生物、および動物のバイオマスを測定し、大まかな食物網構造を記載することができた。 一方、本年度は、茨城大学の不耕起・草生栽培実験圃場で、主に地上部を構成する節足動物のサンプリングを行った。これは、地上部の動物のうちどれくらいが、土壌の餌に依存しているかを調べるために、動物の体の安定同位体比、放射性炭素同位体比、および脂肪酸を解析するために試料の保存性を考慮して実施した。しかしながら、試料のソーティングに時間がかかり、動物の体の分析に着手できなかった。 また、サンプリングの日程調整が難航し、森林撹乱試験区のサンプル採取が実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、平成25年度に採集した茨城大学試験圃場の試料を早急に測定し、記載できる食物網の種類を増やす。これまでの試料解析から、同位体および脂肪酸分析に必要はサンプル量が予測できるようになったので、どの調査地でも必要なサンプル量が確保できるよう、調査対象とするサンプルポイントの面積に留意する。
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次年度の研究費の使用計画 |
茨城大学サイトでの研究成果をとりまとめ、国際誌に投稿する予定で研究を進めた。しかし、若干、予定よりも投稿準備が遅くなり、年度内に英文校閲を終了することができなかった。 現在、3本の原稿の英文校閲を行い、投稿した。したがって、英文校閲費の執行が会計上、新年度となる。
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