研究課題/領域番号 |
25281057
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
横溝 裕行 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 主任研究員 (30550074)
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研究分担者 |
宮下 直 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (50182019)
鈴木 牧 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (40396817)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 哺乳類 / 状態空間モデル / ベイズ推定 / 作物被害 / 最適管理 |
研究概要 |
本研究では、近年日本各地で増加しているシカ、イノシシ(在来種)、アライグマ(外来種)の個体群の成長率や分布域の拡大、農作物の被害を空間明示的に予測し、哺乳類3種の費用対効果の高い管理戦略を探索し、その結果を行政に提示することを目的とする。本年度は、以下の事を行った。 1. 千葉県において各種哺乳類の駆除データの収集と電子化を行うなど基盤情報整備を行った。 2. アライグマに関して個体群動態を明示的に扱った状態空間モデルにより個体数を推定した。推定した個体数に基づき、個体数・景観構造と農作物被害割合を推定するためにロジスティック回帰分析を行った。その結果、生息密度と森林・耕作放棄地の増加により被害が起こりやすくなり,市街地面積が大きくなると起こりにくくなることが明らかになった。 3. 状態空間モデルを用いて、イノシシの密度とその増加の駆動因を推定した。モデルの複雑さに比べてデータ量が不足している場合は過剰適合が起きる可能性があるために、ベイジアンモデルアベレージングにより推定を行った。その結果、耕作放棄地がイノシシの増加の駆動因である可能性が示唆された。 4. シカに関して、より細かい空間スケールで成長率と分布拡大の予測と密度推定を行うために、逐次モンテカルロ法を用いた空間明示ベイズ推定モデルの構築を試みた。 5. 仮想データを用いてシミュレーテッド・アニーリング法による駆除努力の最適な空間配分を計算するためのアルゴリズムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、哺乳類3種の費用対効果の高い管理戦略を導出するために必要な基盤情報整備を行い、今後精緻化が必要であるがアライグマの個体数と農作物被害の将来予測のための統計モデルを構築する事ができた。イノシシに関しては限られたデータで密度の増加の駆動因を明らかにする事ができた。このモデルをもとに将来の密度予測を行うことができる。シカは細かい空間スケールで個体数の推定を行っているために、さらなるモデルの改良が必要である。総合的に判断すると、本年度の研究はおおむね順調に進展したと言うことができる。
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今後の研究の推進方策 |
個体数推定に利用できる情報量から判断すると、シカ・イノシシ・アライグマのなかで、シカはもっとも細かい空間スケールで個体数推定が可能であると考えている。次年度以降は、まずシカの捕獲努力の最適空間配分を導出する。その後、シカ・イノシシ・アライグマの3種を統合し最適管理戦略を提示する。シカに関しては空間の異質性を考慮して将来の密度分布を推定していて、そのことにより捕獲努力をより適切に配分できる可能性がある。従来の空間異質性を考慮しない場合と比較して、軽減できる農業被害面積を算出し、開発した推定手法の有用性を定量的に示す。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度にポスドクを雇用して、シカとイノシシの10-20年後の密度予測にとりかかる予定であった。しかし、統計解析に必要な情報収集を千葉県内の市町村から集めるのに時間がかかったため、次年度にポスドクを雇用をすることにした。 シカとイノシシの10-20年後の密度予測のために、統計モデルの構築とシミュレーションによる解析を行う必要があり、そのためにポスドクを雇用する。
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