研究実績の概要 |
RED発電用の高性能イオン交換膜を開発するために、-SH末端のPVAとスチレンスルホン酸(SSA)およびビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩酸塩(QBm)モノマーを溶媒中に溶解させ、ブロックコポリマーPVA-b-SSAおよびPVA-b-QBmを合成した。このブロック共重合体を使用して陽イオン交換膜および陰イオン交換膜を作製した。これらの膜の膜抵抗と動的輸率はいずれもRm=0.81 [Ω cm2]、t=0.99 [-]であり、市販のイオン交換膜より優れた基礎特性を示した。 実用化に近い規模である大型REDスタックを用いた発電試験を行った。模擬海水、模擬河川水としてそれぞれ0.5M、0.033MNaClを使用した場合、大型REDスタックの開放電圧は29.8 V、短絡電流密度が2.97 A、最大出力は16.7 Wであった。また、海水/淡水濃度比rと最大出力密度との関係を検討した結果、小型セルと同様の傾向を示し、r=30において最大出力17.8W、出力密度0.45 W/m2を示した。この時の海水および淡水の供給圧はそれぞれ20.8, 9.8 kPa、溶液流量は0.0046, 0.0046 m3/minであった。この値よりポンプ動力をポンプ効率85%として算出すると2.76 Wとなるため、実効出力は15.1 Wと計算された。この結果よりRED発電システムとしては将来のエネルギー源として期待できる。 実用化において膜汚染が問題となるため、バッチ式および流通式の電気透析セルを使用して種々の市販イオン交換膜の膜汚染に関する評価を行った。流通式のセルでは塩濃度の変化による影響を受けることなくファウリング挙動を解析でき、流通式のセルの方がファウリング評価に適していると考えられる。今後はこの膜汚染の評価方法により膜汚染に強い前処理法や発電セルの開発に応用する予定である。
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