研究課題/領域番号 |
25281070
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北芸術工科大学 |
研究代表者 |
田口 洋美 東北芸術工科大学, 芸術学部, 教授 (70405950)
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研究分担者 |
佐々木 史郎 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (70178648)
池田 透 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50202891)
高橋 満彦 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (10401796)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 都市防衛システム / 生息フロンティア / アーバン・ワイルドライフ / 合意形成 |
研究概要 |
初年度、国内研究では平成20年~25年にかけての都市及び周辺、人口密集地における大型野生動物の出没事例のデータベース化資料の収集と整理作業(担当:田口洋美)を進めるとともに都市に生息する外来種に関する生息状況調査及びモデル地域における外来種の拡散に関する調査(担当:池田透)を実施した。 海外においてはアメリカ合衆国ウィスコンシン州ミルウォーキーで開催されたThe Wildlife Societyに参加、五大湖南岸のGLIFWCとの連携を図り、調査環境の整備を図った(担当:高橋満彦・田口洋美)。また、ケニア共和国のナイロビ市及びマサイ族の生活区を中心に第1次の都市と国立公園内の野生動物との軋轢問題調査を実施した(担当:田口洋美・高橋満彦)。現時点においてアメリカとケニアの両国では、国家機関中心の野生動物保護管理から地域の民族知(民俗知)を援用した地域主体の保護管理手法(Wildlife Conservancy)へと大きく舵を切りつつある現状を把握した。さらに筆者らは過去20年あまり極東ロシアの先住民族における狩猟漁撈研究を実施してきた経緯があり、極東ロシアで問題となっているUrban Wildlifeについても調査を開始した(担当:佐々木史郎・田口洋美)。 こうした海外における情報収集及び調査研究の成果は、すでに施行以来12年を経過している国内の特定鳥獣保護管理計画(環境省)の浸透、すなわち我が国においても地方自治体主体の保護管理手法への移行期に当たっており、本研究が目指している都市防衛システムの構築において歴史社会的コンテクストを意識した手法の構築という問題に十分にフィードバックし得ることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
"Urban Wildlife Management"の概念を研究者間で共有し、具体的国内外の事例と照らし合わせながら、これをどのように日本国内に見合った概念として再構築し実践プログラム化すべきか、また再構築や実践プログラム化にはどのような分野の協力が不可欠かなど、議論は当初の見込みよりも具体的な進展を見ている。 平成20年~25年にかけての都市周辺における被害、出没事例のデータベース化は順調に進んでおり、本年度内にまとめられる見込みとなった。また海外調査地のケニア、アメリカ、極東ロシアに関しても協力体制をスムーズに構築できたことは今後の研究に加速度を与えるに十分な成果といえる。 但し、国内学会におけるアーバン・ワイルドライフ研究の環境作りに関しては順調とはいえず「おおむね順調」という評価となった。これに対応するために都市及び周辺住民の合意形成に関する環境倫理学的理論化を進め、実践的対応モデルの強化を図るため、連携研究者から研究分担者を2名増員し全体の底上げを図ることとした。さらに都市工学、都市デザイン系研究者との議論を開始するための準備をより加速する必要がありそうである。このため既述した環境倫理分野、北海道札幌市などのアーバン・ベアに関する具体的議論が可能な研究者を追加したのはこのためである。
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今後の研究の推進方策 |
① 6月上旬:全体研究会(予定:東京大学)。6月下旬宮城県遠刈田温泉にて開催される「第25回ブナ林と狩人の会-マタギサミット-」にて、中間の報告会、ワークショップを開催。 ② 8月:ケニア共和国における現地調査。マサイ族など現地住民の生活とNo Hunting Policyとの関係、ナイロビ市街地及び周辺の第2次調査。 ③ 10月上旬:札幌市および周辺の出没事例現地視察調査。11月:兵庫県神戸市における出没事例現地視察調査。但し,本年はクマの人里、都市への出没が予想されるため,可能な限り現場の聞き取りを優先的に実施してゆく。 ④ 1月下旬:合同研究会(東北芸術工科大学)。Urban Wildlife研究会。2年目の研究活動に関する取りまとめと微調整。 ⑤ 2月中旬:アメリカ合衆国アイオワ州にあるIDNRおよび五大湖周辺におけるGLFWCの第2次現地調査。本年度は10月にアメリカにおいてWildlife Human Dimensionの学会があり、この学会に若手研究者に参加してもらい研究動向とUrban Wildlifeに関する情報収集を行い、各国研究者と交流する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
先ず全体の予算に関してである。申請時の計画から採択後の研究計画へと立て直す際、急ぎ研究費を消化するのではなく、最大効果を狙っての研究活動を目指す支出計画を立てた。このため国内外の研究機関や研究者との関係構築を初年度の目的とし、中間年である本年度と最終年度におけるフィールドワークを中心とした現場研究費の充実を図りつつ、現場で抽出されたデータを重視しながら研究を進めることとした。また、当初の計画では2年度目からの分担金を予定したが、既述した観点から初年度から分担金を支給して研究者各人がそれぞれの分担研究を展開しやすい環境を整備した。こうした全体研究計画の中で繰越金が発生することとなった。 2年度目の本年は研究分担者を2名増員し、より鮮明に研究分担域を決定し、それぞれが有機的に活動し年2回は全体の研究会、ワークショップ的な集会を実施することで研究成果の高度化と集約化を目指すことにした。このため予算も旅費に多くを割き、国内外のフィールド調査をより充実させ、リアルタイムで生データを収集できる方向で使用計画を立てている。また、本年6月下旬宮城県遠刈田温泉にて開催される「第25回ブナ林と狩人の会-マタギサミット-」にて、中間の報告会、ワークショップを開催することとした。
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