研究課題/領域番号 |
25281071
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
三好 博昭 同志社大学, 総合政策科学研究科, 教授 (80399055)
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研究分担者 |
紀伊 雅敦 香川大学, 工学部, 准教授 (20426266)
竹下 貴之 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (70344075)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境政策 / 環境技術 / 二酸化炭素排出削減 / 大気汚染防止・浄化 / 電気自動車 / 次世代自動車 |
研究実績の概要 |
本研究は、電気自動車等の次世代自動車を分析対象として、普及のための政策とその効果を分析するものであり、「次世代自動車普及のためのインセンティブ政策の研究」(テーマ1)と「次世代自動車普及によるグローバル・ベネフィットの研究」(テーマ2)という2つの研究で構成される。 まず、テーマ1は、インセンティブが次世代自動車の普及と社会的厚生水準に与える効果等を分析するものであり、平成26年度は、次世代自動車が燃料供給インフラと補完的な関係を有する点に着目し、この関係を考慮した普及モデルの構築を開始した。 テーマ2は、次世代自動車普及の効果を、温室効果ガス削減、大気汚染物質の削減とそれによる健康被害、医療費の削減等の観点から世界レベルで推計するものである。平成26年度は、主に以下の4つの作業を実施した。まず、第1に、次世代自動車導入に関する各国の政策目標値、長期最適化型世界エネルギーシステムモデル(REDGEM70)による次世代自動車の普及予測などを参考にしながら、次世代自動車の2050年までの普及に関して3つのシナリオを設定した。第2に、次世代自動車の普及シナリオデータと経済環境統合マクロ計量経済モデル(E3ME)との連結を行った。第3に、E3MEから出力される大気汚染物質排出量を大気化学物質輸送モデルTOMCATに入力するための準備作業を完了した。そして、第4として、REDGEM70を利用したシミュレーションを実施し、次世代自動車導入の効果をエネルギー供給安定度等の観点から評価した。 上述した作業の他、本研究活動の社会還元活動の一環として、シンポジウム『自動車の新技術:その効果と課題』を開催し、本研究のメンバーがこれまでの研究成果等について報告した。また、自動車の新技術に関連するテーマで、3つの講演会を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
テーマ1に関し、当初計画では、次世代自動車と燃料供給インフラとの補完的な関係性に着目した普及モデルを平成26年度中に構築することとしていたが、これが実現できていない。また、テーマ2に関して、次世代自動車の普及シナリオ並びにシナリオとE3MEとの連結には改良すべき点が残されている。これらの遅れについては、平成27年度前半に取り戻したい。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、本研究の最終年度として、以下の作業を行う。 まず、テーマ1については、平成26年度に着手した次世代自動車普及モデルを完成させ、これまでの分析結果とともに学会等で発表し、国際ジャーナルに投稿する。 テーマ2については、平成26年度に構築したシナリオの見直しとE3ME側サブモデルの改良・精緻化作業を行った後、次の2つの作業を行う。まず、第1に、E3MEで推計された地域別の大気汚染物質排出量をグリッド毎の排出量に分割した上で、TOMCAT にデータをインプットし、次世代自動車の普及が各地域の大気中濃度に将来的にどのような影響を与えるのかをシミュレートする。第2に、大気中濃度と疾患発生率との関係、各疾患の医療費と健康被害の金銭評価額等に関する先行研究結果を用いて、次世代自動車の普及による人間の健康被害並びに医療費削減効果等を金銭評価する。なお、これら2つの作業に加え、REDGEM70とTOMCATの連結も検討してみたいと考えている。これは、E3MGとREDGEM70では評価しえる政策の範囲に違いがあり、2種類の連結を構築することによって、より広範な自動車技術政策の評価が可能になると考えるからである。 上記の他、本研究の総括として以下の事業を行う。 1)欧米・アジアから、次世代自動車普及に関係する政策研究者、政策立案者を招聘して国際会議を開催し、本研究の成果を社会に還元する。また、本研究の関連領域で研究を進める国内の若手研究者(博士課程学生を含む)を招聘し、ワークショプを開催する。 2)テーマ1とテーマ2を1 冊の本に取りまとめるべく、原稿の執筆を進める。
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