研究課題/領域番号 |
25282008
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研究機関 | 神戸芸術工科大学 |
研究代表者 |
相良 二朗 神戸芸術工科大学, デザイン学部, 教授 (10330490)
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研究分担者 |
種村 留美 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (00324690)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 認知症 / 独居高齢者 / インタフェース / 国際情報交換 / スウェーデン / デンマーク |
研究実績の概要 |
調査班は、継続して認知症者を含む在宅独居・日中独居高齢者に対して訪問インタビュー調査をETUQ-Kobe(神戸版日常生活支援技術使用状況調査)を用いて実施した。この結果、通算で185名(正常134名、認知症者38名、MCI9名、その他4名)となった。ETUQ-Kobeの調査結果はデータベースに追加し、6月に開催された世界作業療法士学会日本大会(横浜市)参加のために来日したスウェーデンのカロリンスか研究所の作業療法士Ms. Annicka Hedman氏、Ms. Louse Nygård氏らと共同で比較検討を行った。その結果、同一被験者に対する時間軸経過による変化の重要性が指摘され、今後の課題となった。 インタビューの中で出現した高齢者の困りごとについてリストアップを行い、4つのカテゴリーに分類した。1)促しが有効と思われる深刻な問題、2)促しが有効と思われるがあまり深刻でない問題、3)深刻な問題であるが促しでは解決しない問題、4)重要性が低いあるいは関係が薄い問題。この分類をもとに、開発するべき促し装置をリストアップし、重要度が高いものからデザインに着手した。 デザイン班は、技術的可能性および使用性の面を検討し、新たに「ガスコンロ点火状態を知らせ消火を促す装置」、「洗濯機の操作手順を促す装置」、「炬燵やホットカーペットなど家電製品の使用状況を知らせる装置」、「玄関の施錠状態を知らせる装置」「危険な室内気候を知らせる装置」のデザインに着手した。 「ガスコンロ」「室内気候」について基本設計および回路設計を終え、「洗濯手順」「家電製品の通電状態」についてはテンタクルス日本版の周辺装置の一つとして試作開発を行った。 研究成果については、6月にUD2014 Lundにて発表を行い、2015年8月のiCREATe2015へ投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査については被験者の確保が難しいが、協力機関が増えてきており、数名の積極的な協力者も確保でき、試作開発品に対する試用協力者も確保することができた。 試作開発については、スウェーデンの促しシステムであるテンタクルスの日本での権利を有している株式会社オカエとの関係を築くことができ、共同で製品化する可能性が見えてきた。また、回路設計までは順調に進んでいるが、実装ならびにソフトウェア開発に人手不足を感じてきたが、兵庫県立福祉のまちづくり研究所との連携を築くことができたため、2015年度は分担研究者として参加することとなった。 促し装置のアイデアやこれまでの調査ならびに試作状況について、スウェーデンのLund大学にて開催されたUD2014にて報告を行ったが、多くの聴衆から強い賛同を得られた。また、3月に訪問したデンマークでは脳損傷者リハビリテーションセンター等との関係を築くことができ、また、スウェーデンでは「認知を支援する技術」の著者を紹介いただいた。これらの人的ネットワークは最終年度に向けて有効に機能するものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる次年度は、在宅独居高齢者への訪問インタビュー調査を継続するとともに、調査で明らかとなった重要な問題に対する促し装置の試作開発を行い、試用実験を行う。具体的には、「ガスコンロ点火状態感知器」「室内気候モニタ」「玄関施錠状態モニタ」などを開発する。また、初年度に試作した玄関への接近を感知し戻ることを促す装置の改良版を制作する。 以上の開発を10月を目途に行い、試用実験を通して有効性や諸問題についての知見を得、促し装置のありかたについて提案を行う。 8月にはシンガポールで開催されるi-CREATe2015(支援技術とリハビリテーション工学に関する国際会議)にて研究成果を発表し、アジア各国の研究者との意見交換を行う。また、高齢者の食の安定を確保する取り組みについて、食をテーマとするCUMULUS2015に参加し調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月上旬に計画したデンマークへの調査において業務の都合上1名の共同研究者が参加できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
残額は次年度の試作開発のための材料費および外注費へ割り振って使用したい。
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