研究課題/領域番号 |
25282009
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 神戸芸術工科大学 |
研究代表者 |
杉浦 康平 神戸芸術工科大学, アジアンデザイン研究所, 所長 (00226432)
|
研究分担者 |
齊木 崇人 神戸芸術工科大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (90195967)
今村 文彦 神戸芸術工科大学, デザイン学部, 教授 (50213244)
黄 國賓 神戸芸術工科大学, デザイン学部, 准教授 (50441382)
山之内 誠 神戸芸術工科大学, デザイン学部, 准教授 (40330493)
佐久間 華 神戸芸術工科大学, 芸術工学研究科(研究院), 助手 (00589202)
曽和 英子 神戸芸術工科大学, アジアンデザイン研究所, 研究員 (80537134)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 樹(生命樹) / 山(宇宙山) / 柱 / 台・壇 / 壺 / 山車 / 聖獣 / カヨナン |
研究概要 |
本研究は日本と中国の山車のデザインと象徴性、及び山車を取り巻く構造原理などを解明するために、「聳えたつ「樹」「山」から、動く「柱」・巡行する「山車」へ…」樹+山(岩)、樹+山+車(山車)、樹+柱(天、地を結ぶ宇宙の中心軸)、山(宇宙山:崑崙山+蓬莱山)+聖獣、傘(天上界・花盛り)、樹+山(宇宙山)、樹+山(壺)、樹+舟(山車)、樹(生命樹)+山+動物たち、樹(生命樹)+山(壺・亀)などのキーワードを立てて研究を進めました。 現地調査の対象地を国内の予定から海外へ視点を変えて本年度の研究を行った。 8月にはインドネシア、シンガポールにおける「Asian Civilisations Museum」などにみられる生命樹・グヌンガンの造形研究、御輿の造形の調査を行った。 グヌンガンの調査について、本調査ではグヌンガン(山)、クカヨン(樹木)における「山」と「樹」の意味、ワヤン上演における対をなすグヌンガンのデザイン(二つのグヌンガンが並べられる)、グヌンガンにみられる表・裏の対照的な色彩使い、ダランを中心にした、左・右の人形配列、グヌンガンの構図、デザインの意味…などを明らかにした。 御輿の調査については、シンガポール「Asian Civilisations Museum」が所蔵するバリ島の「Processional palanquin with naga guardian figures」の御輿を対象に、御輿の寸法記録、御輿に見られる文様、形状、色彩記録などを実施した。 11月にはワヤン研究者である梅田英春氏との研究交換を行い、その結果は以下の3点成果があげられる。①バリのカヨナンは、ジャワのグヌンガンとはその形、図像は異なっているが、「樹木」を表現している点では共通。②ジャワのグヌンガンも「クカヨン」「カヨン」と呼ばれる点で共通。③バリのカヨナンにも「山」としての機能がある。現在では、その結果を基づいて、アジア山車の構造原理の解明作業を進めています。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は日本や中国の山車、東アジアの山車と比較し、日本と中国の山車のデザインと象徴性、及び山車を取り巻くコミュニティ構造原理などを解明するための基盤研究を確立する。 当初25年度の研究計画においては、江戸後期時代から現在に至る「瀬戸内沿岸、九州北部の山車(太鼓台)」の文献資料を基にして、姫路周辺(高砂)、淡路島、四国の観音寺、豊浜、新居浜、西条など、本州側では、明石、倉敷、広島や小豆島などの山車(太鼓台)の構成原理(技術、象徴意味、祭礼空間、祭りとコミュニティ)を時間軸と空間軸を取り入れた分析と、製図によって明らかにするという計画内容であったが、実際の製図によって明らかにされたのは瀬戸内沿岸、本州の太鼓台の形態だけではなく、「樹」「山」「柱」などのキーワードを巡るアジアの図像への考察も視野いれ、「聳えたつ「樹」「山」から、動く「柱」・巡行する「山車」へ…」アジアの山車研究、分析、比較するための方法論(ダイヤグラム化)を提示した。その方法論はすでに2013年度神戸芸術工科大学アジアンデザイン研究所の報告書に掲載し、今後のアジアの山車の研究方向を提案されている。 また、実際のフィールドワークや研究者との意見交換により、インドネシアのワヤンにおけるグヌンガン(山)、クカヨン(樹木)の構造原理をも明らかにした。日本と中国はいずれも山岳信仰から宇宙山・宇宙樹の考え方が生まれ、宇宙山と宇宙樹を通した神と人のコミュニケーションの装置として山車が形づくられてきた。現在ではグヌンガン(山)、クカヨン(樹木)の構造原理と山車の構造との関係性について、まとまっているところである。また、年度末にはこれまで蓄積してきた研究資料もデータベース化され、共同研究メンバーの情報共有を図っている。今年度の達成度は当初の計画以上に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は東、東南アジアのフィールドワークを通して、研究課題を進めていく。研究メンバーが現在まで蓄積してきた東、東南アジアの山車研究、調査資料のデータベースを構築し、研究資料の共有化を図る。 中国の江南地方では、前童鎮を始め、各集落の祭礼運営に氏族組織の存在が重要な役割を果たしている。前童鎮は18の氏族がそれぞれ精緻な造形をもつ山車(鼓亭、抬閣)を所有している。ここでは、各氏族の運営組織を分析し、各氏族の山車形態の選定要因や象徴する意味を比較する。また、現地での実測された各集落の山車のデータをもとに、それぞれの山車の構造、形態、分布をとらえ、江南地方の各地域の山車の構成原理を明らかにする。また、すでに明らかにされてきた各集落の空間プランの分析資料と各氏族の山車の巡回ルートをつきあわせて、集落空間の構成原理とどのような関係があったかを比較する。ここでは図解分析方法を用いて、中国・江南地方における祭礼空間の構成原理を明らかにする。 10月には選定された「東南アジア」、タイ、ネパールなどの集落で現地の研究協力者と共に現地の調査を行い、アジア山車の構成原理を読み解いていく。神話伝承や芸能、自然の推移に従った「東南アジア」の山車の構成原理(技術、象徴意味、祭礼空間、祭りとコミュニティ)を時間軸と空間軸を取り入れた分析と、製図によって明らかにする。アジア山車研究に平行して、日本の神迎えの装置である柱立て、神輿、傘蓋、冠、玉座など、山車の構造・造形にかかわりをもつものの調査・研究も行う。年度末に研究会を開き、学会への発表準備を進めていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初25年度の研究計画においては、姫路周辺(高砂)、淡路島、四国の観音寺、豊浜、新居浜、西条など、本州側では、明石、倉敷、広島や小豆島などの山車(太鼓台)の構成原理(技術、象徴意味、祭礼空間、祭りとコミュニティ)を時間軸と空間軸を取り入れた分析と、製図によって明らかにするという計画内容で、二回国内のフィールドワーク調査を計画していたが、瀬戸内海の山車に関する調査は、現地でのフィールドワーク調査ではなく、これまで分析されてきた資料に基づいて、東アジアの山車構造との比較し、作図を起こすという研究方法に変更した。そのため、現地調査の対象地を国内から海外(インドネシア、シンガポール)へ視点を変えた。海外調査のメンバーが最小限だったため、旅費の予算が本来の計画より少なかった。また、当初の計画に必要な人件費、謝金、その他などの予算も、本来の計画の予算より、大分おさえられたためである。 今年度は東南アジアの山車研究、調査資料のデータベースを構築しながら、「東南アジア」、中国(1回)、タイ(1回)、ネパール(1回)合計3回などの集落で現地の研究協力者と共に現地の調査を行い、アジア山車の構成原理を読み解いていく。特に当初の研究計画書に入っていなっかたタイ、ネパールなどの海外調査に伴う旅費、謝礼、研究補助者の旅費、調査後の資料整理に伴う補助費、現地通訳者への謝金などは前年度より大幅に増えてくると予測している。H26年度はH25年度の使用額と合わせながら、海外フィールドワーク調査、国内調査、研究会、データベースを構築、学会での研究成果発表などの計画で研究を進めていく。
|